モデルがばれた?
モデルがばれた?
今日は杉本先生が陸連に用事があるので、陸上の練習はお休みになった。
弘子と薫が「結衣、今日は一緒に帰れるね。一緒に帰ろう」って言ってきたので、私は「うん、一緒に帰ろう。久しぶりだもんね」ってOKの返事をした。
学園を出て三人で一緒に歩く・・・。薫が「結衣、練習はどう?」って聞いていた。
私は「結構きついよ。足なんかパンパンだもん」って言うと。弘子が「結衣は杉本先生に気に入られているもんね」って言うので、私は「そんな・・・違うよ」って答えた。
でも弘子は「いくら体育祭の出来が良かった・・・。小澤姉妹とはタイム差は結構有るはずだもんね」って言いつつ「杉本先生って結衣を見る目が他の人とは違うもんね」ってからかう。
私は、少し頬を膨らまし「そんな事無いもん」って、少し怒ったように言った。二人は「はははは」って笑った。む・・・からかわれた様だ。
少し坂になっている駅への道を歩いて行くと、弘子が指を指して「危ない」って声を上げた。
パッと見ると、ベビーカーがお母さんたちのお話をしているところから離れ、坂を下っている。さらにベビーカーは走行中の車に向かった進んでいる所だった。
お母さんたちが弘子の声に気がついて振り向いたけど、固まったようで動けないみたいだった。
私は、とっさにガードレールを飛び越えベビーカーを助けに走った。
キーって車が急ブレーキをかける。そして薫と弘子が目を覆う・・・。
私は一瞬遅かった。ベビーカーをつかんで引っ張った瞬間に、ベビーカーのハンドル部分と車が接触し、ベビーカーは私の手から離れしまった。
しかしベビーカーは回転しながらも遠心力なのか、奇跡的に赤ちゃんが飛び出てきた。
しかもラッキーなことに赤ちゃんは私の胸に向かって飛んで来たので、私は慌てて受け止めた。もちろんベビーカーはその後ガードレールに当たって大破した。
赤ちゃんが飛び出てきたのは、椅子型でなく乳母車形だったので引っ掛かりが無く、うまい具合に飛び出てきたみたいだった。本当にラッキーだった。
私は、その場でしゃがんでしまい、今までの出来事に呆然として震えが来た。
その後停止した車からビジネスマン風の小父さんが出てきて、私が赤ちゃんを抱いているのを見てビックリしていた。
実はこの時赤ちゃんをキャッチする際に赤ちゃんの手が私の眼鏡に当たりそのショックで眼鏡が飛んで大破してしまった。
車のブレーキ音やベビーカーの大破する音を聞きつけ、生徒や野次馬が一杯集まってきた。
もちろん生徒の中には女子中学生も居たので私の眼鏡の無い顔も見られたようだ。
薫が救急車と警察を呼んでくれて、私と赤ちゃんは一応確認のために病院へと向かった。
救急車が到着し、赤ちゃんを抱いてお母さんが乗り込みその後に私が乗った。弘子は行き先を確認しがてら、私の鞄を持ってきてくれた。
救急車はサイレンを流しながら走り始め、十数分後には病院に着いた。赤ちゃんのお母さんが医師に事情を説明する。
赤ちゃんは念のため、レントゲンを取るようだ。私は特に外傷も無いので問診と腕の具合を見るだけで終わった。
後で聞いたけど赤ちゃんは無傷で健康って事だった。
そして弘子がひろくんに電話を入れていたくれてたので、後で病院まで迎えに来てくれた。
その間に、偶然に病院に取材していた新聞記者がいて、私の行動を記事にした。もちろん写真入で・・・。
当然、後で警察官が事情を聞きに現われた。私は、結局二回同じ事を話した。
もちろんその後で全学園集会が開催され、私は感謝状を貰った。この事で私は一躍時の人になってしまった。
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しばらくすると、私が教室に居るときに他の学年やクラスの人がちらちらと見に来ているようだ。
赤ちゃんを助けた人を除き見に来てるのかな?って思っていたら、少し違うようだった。
どうも、新しく高校に入る新入生や学園の中学生三年生に配られた学園の高校用パンフレットと新聞に載っている写真を見比べたらしい。
又それが父兄・兄弟を通じて全校に判ってしまったみたいで、私を見に来る為のクラスの見学・・・って事になったみたいなんだ。
どうも私が学園の制服モデルをやっているのが判ってしまったようだ。けれど誰一人として私に直接は聞いてこないので黙っていることにした。
その時は私の制服モデルが大人気になっているとは思わなかったんだけど。後で聞いた話では、学園の高校用パンフレットがネットで高値で取引されているらしい。
この事は後で村瀬装飾さんの娘さんの綾乃ちゃんが入学してきて、彼女が私に教えてくれた。
この結果、私は追っかけまわされることになってしまった。そして、しばらくは男子生徒の告白が・・・毎日続いた。私は放課後に陸上の練習をしているので、ほとんどは昼休みに呼び出しを受ける。
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某男子生徒「結衣ちゃん僕と付き合って」
私 「ごめんなさい。私はこれなの」って左手の指輪を見せる。
某男子生徒「え~・・・うそ~」って泣きながら去ってゆく。
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私は「弘子・・・薫・・・」って助けを求めるけど、苦笑いされるだけだ。でも告白時に私の肩をつかんだり乱暴な態度を示すと、いつの間にか現われて「あんた、そんな事してると勝村先生に言うわよ」ってけん制してくれた。
生活指導の勝村先生を持ち出すと、ほとんどが「ちぇ」って舌打ちし去った言った。
男子生徒の告白が少なくなると、今度は三年生や一年生の女子から、妹やお姉さまになってコールが出てさらに困ってしまった。これには弘子たちも困ってしまったようだが・・・。
でも本当は、私のほうが一番困ってるのに・・・。
でもこの事では、ひろくんが私を守ってくれたので、ニコニコだったけど・・・。このことを里美にしっかり見られ、憎悪の対象が私に向かっていたのを見逃した。
そして・・・・・・。