陸上大会への練習(補欠の私)
陸上大会への練習(補欠の私)
二年生での体育祭は、可も不可もなくスムーズに終わった。成果は学年女子短距離の一位の金メダルと女子総合三位の銅メダルだった。
私は体育祭での走りのおかげ?で、陸上大会の短距離100メートルの選手・・・ではなく補欠要人に選ばれてしまった。
おかげで、帰宅部してたけど、臨時の陸上部員にされてしまった。体育祭では学年総合三位だったんだけど、二位の人との差が小さかったので体育担当の杉本先生が独断で決めてしまったんだ。
代表選手の二人がトラブルの無い限り、私の出場は無いのだけど・・・。
そして、女子短距離に選べばたのは去年の一位だった”小澤 舞”先輩の妹で一年生の沙瑛ちゃんが一位だった。
しかも二位はスタートを失敗して私と僅差だった、沙瑛ちゃんの双子の沙希ちゃんだった。
陸上の選手に選ばれた人たちは、放課後残って大会に備えて練習をすることになった。
「あ~ん、家事が疎かになっちゃう・・・」って、ひろくんに嘆いた。
でも、ひろくんは「いいよ、結衣はガンバって練習をこなして不意に備えて、がんばれよ」って言ってくれた。
練習を始めてみると双子の二人と私との差は、やはりそれなりに有った。それでも、ひろくんに背中を押してもらっているので練習にはがんばった。
放課後グランドに集合し、準備体操から始まり、さらに走る為のUP運動に入る。私は本格的にUP運動をやった事がないので、杉本先生の指導の下でUPを行った。
本格的にUP運動をすると、体の隅まで関節が動くみたいで、早く走れるような感じだ。でも筋力トレーニングを多く取り入れたので疲れたのか、思ったほどタイムは伸びなかった。
でも小沢姉妹はぐんぐんタイムを伸ばした。中学でもかなりやっていたらしいんだって、当然差がついて当たり前だった。
土曜日の練習のとき、杉本先生が昼食を奢ってくれることになった。選手全員で先生の行きつけの定食屋に向かう。
学園からだいぶ離れたところにある”北海道食堂 十勝”って所に入っていった。
「いらっしゃい!先生、今日は又たくさん生徒をれて来ましたね」元気な大声で背の高い奥さんが声を掛けた。
先生は「こんにちは奈緒子さん、今日は陸上大会の選手を連れてきたんだ。全員に十勝定食を16人前、宜しく野郎の分はご飯大盛りで」って注文し「皆、すわったすわった」って席に着くように言った。
菜緒子さんと言われた女将さんは、奥の厨房に向かって「あんた、十勝定食 16人前! 特急で」って言ってお冷の準備に掛かった。
私は小澤姉妹と一緒に座って食事出てくるのをを待った。厨房を見るとかなり太った親父さんが慌しく動いて作っているようだ。
女将さんが全員にお冷を配ろうとして準備を始めていた。かなりの量のようなので私は奥さんに手伝いを買って出た。
女将さんは「わるいね、じゃ半分お願い」って一杯お冷の入ったコップが乗ったお盆を渡された。私はテキパキとお冷を配り始める。
コップを置くたびに「結衣ちゃん、ありがと」とか「葵さん、ありがとう」って言ってくれた。
奥さんが「結衣ちゃんって名前だね、結衣ちゃんお手伝いありがとう」ってお礼をいわれた。
しばらくすると、女将さんが両手で定食が乗ったお盆を次々と運んできた。もちろん私はそれも手伝った。
最後には旦那さんが私の所に定食を持ってきて「手伝ってくれて、ありがとう。おまけ付きだよ」って、皆とは一品多いウーロン茶の缶が乗っていた。
皆は「結衣って良いな」んなんて言うと、奥さんが「手伝ってくれた御礼よ。皆も手伝えばよかったのに。ははは!!」って豪快笑った。
定食屋の親父さんは先生と同郷(北海道)だそうで、名前は多田って言うんだって、奥さんの方がかなり身長が高く凸凹コンビのおしどり夫婦だそうだ。
全員で「いただきます」っていただくと、思いのほかボリュウムがあって美味しい。この店はよく学生たちが多く来るようだ。私たちに他にも他校の制服を着た学生さんたちもいる。
突然、女将さんが、他校の制服を着ている彼に「こら!!加藤君、以前から”たまねぎ”を出しちゃ駄目だっていってるのに。言うことを聞かないんだから、血液がどろどろになるよ」って叱っていた。
加藤って言われる人が「僕、たまねぎがまったく駄目なんです」って涙を流し謝っていた。一緒に食べている人が「誠、だから俺も前から言ってだろう。食べなきゃ駄目だって・・・」って追い討ちを掛けていた。
可愛そうに、彼はますます落ち込んでいた。
私は、たまねぎってすごく美味しいのに嫌いな人がいるなんて不思議だった。たまねぎが嫌いな人っているんだ・・・。
私たちが全員食べ終わると、先生が「今日は俺の奢りだ」って会計を済まし、定食屋の親父さんに「ごちそうさん」って定食屋を後にした。
私は思いのほか美味しかったので、そのうち一度はひろくんと来ようなんて考えた。
練習が遅くなると家が遠い女子生徒は先生が送ってくれるのだけど、他の選手に比べ私だけが方向が違っている。メンバーも先生の車は定員一杯で窮屈だ。
全員を先生が送ると、道順がよくなく先生も私も家に着くのがすごく遅くなってしまった。
その事があった後、ひろくんが偶然を装って帰る時間あたりに現れ「杉本先生、彼女だけ方向違いのようですね。私は一緒の方向ですので送って行きましょう」って先生に告げた。
先生は「葵先生、申し訳有りませんな、そういえば以前事件があったとき送り迎えしてらしたんですね。本来は私が送らないといけませんが、お願いできますでしょうか」って言ってきた。
ひろくんは「お安い御用ですよ。私に任せてください」って告げると。杉本先生は「では、お願いします。園長へは私が連絡いたします」って頭を下げた。
私は思わず、心の中で「やった!!!ひろくんと一緒に帰れる」って万歳した。それからはひろくんが家まで(同じ家だもんね)送ってくれるようになった。
私は手抜きをせず、練習をこなしていたので、だいぶ筋肉疲労が溜まったようで、すこし足取りが重くなってきた。
そんな折、ひろくんはいつもと違うところに向かって車を進めていた。私は「いつもと違う道だけど、どこに向かっているの?」って尋ねた。
すると、ひろくんは俺の知り合いの所、もうすぐ着くよ」って答えた。
そして車は雑居ビルの地下駐車場に入っていった。車を降りてエレベーターに乗るとひろくんが10Fのボタンを押した。エレベーターを降りて通路を進むと”エステティックサロン北原”って書いてあるドアに着た。
ひろくんはドアを開けて中に入っていったので、私も後に続いた。受付で「葵だけど、弥生さんいる?」って聞いた。
受付のお姉さんは「しばらくお待ちください」って言って奥に入っていった。
しばらくして白い衣装を着た綺麗なお姉さんが現れ、ひろくんを見ながら「お久しぶりね」って言って私を見ながら「この子ねひろき君を射止めた人は」って微笑みながら言った。
ひろくんは「その件は後で、今日は結衣をよろしく」って私の背中を押した。
お姉さんは「そうね、じゃこっちへ」って私を奥に案内した。歩きながら「自己紹介を忘れたわ。私は”北原 弥生”って言うの、彼とは高校時代の同級生よ」って言った。
私は「葵 結衣です、ひろくんにはここの事は何も知らされていないいですが・・・」って言うと。「あらら、ひろき君ってなにも説明しなかったの?」って笑った。
そしてロッカールームに連れて行かれ、「これに着替えて」って、紙袋を渡された。中にはフリーサイズのビキニとバスローブが入っていた。
着替えてから別の部屋に連れて行かれると、狭いベットが置かれ、そこに寝るように言われた。どうもエステをするようだ。私は初めてで勝手がわからない。
弥生さんは「エステだけじゃないわよ」って笑った。そして「貴女、陸上やってるんだって、手足なんかパンパンになってるんでしょう。今回は筋肉疲労を取るのが目的よ、エステはおまけよ」って言った。
そして、弥生さんと助手のお姉さんが、私の体を揉み解し始めた。
最初はすこし痛かったが徐々に心地よくなり、睡魔に襲われ眠ってしまった。「結衣ちゃん終わりましたよ」って言われて目が覚めた。
体がすごく軽い、弥生さんたちに「体が軽いです。ありがとうございます」ってお礼を言った。
服に着替えて待合室に戻ると、ひろくんがソファーに座って転寝をしている様だった。
次の日は体調がすこぶるよく、もちろんタイムも自己記録を更新した。でもやはり小沢姉妹には敵わない。やはり身長差が大きいと思う、彼女たちとは20センチ近く差がある。
そんなこんなで、陸上の練習をした。大会までは一ヶ月弱ある。大会は文化祭の翌々週から始まる予定になっているだ。
陸上に選ばれたから、文化祭はパスしようとしたら。
文化祭実行委員より「貴女は強制参加です。もちろんあなたのクラスは去年と同様にメイド喫茶です」って言わてしまい。しかも「これは学園長の意向でも有ります。
なんて言われてしまった。昨年私たちが行ったメイド喫茶がすこぶる評判だったために学園の周りから要望が出たって事らしい。
ひろくんに相談したら、「わかった、交渉する」って、学園長に話したらしいが、逆に説得され、私に苦笑いで「結衣、ごめん無理だった」って手を合わせた。
私は「え~」ってうなだれた・・・。けど私は頼まれるとあまり嫌だと言えない性格なので、気合を入れなおすことにした。
でも文化祭には・・・とんでもない事件が待っていた。




