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夏の出来事(2/2)

夏の出来事(2/2)


根津木さんの車は大通りを離れ細長い路地をゆっくり進み始めた。根津木さんが「もうそろそろ着くから」って告げると。


少したってから車がゆっくりになると旧家のような和風建築の前に止まった。


私たちは車を降りて玄関の暖簾をくぐると和服のよく似合う女将さんと思われる人が出迎えてくれた。


「あら、根津木さん今日はずいぶん早いですわね」って微笑んだ。


根津木さんは私を指し「彼女の出来がすばらしくすぐOKが出たのでこんなに早くなっちゃったよ」って頭を掻きながらさらに「予約時間よりずいぶん早いけど大丈夫かな」って女将さんに尋ねた。


女将さんは「大丈夫ですよ、いつもの部屋は貴方の為の部屋みたいなものですから」って言い「皆様どうぞこちらへ」ってその部屋に案内された。


部屋に入り全員が座布団に座ると女将さんが「本日は扇屋へお越し頂いただきありがとうございます」って頭を下げ挨拶後さらに続けて「当店の女将の鈴と申します。いつも根津木さんにはひいきさせて貰っています」って告げた。


根津木さんは端から順に「葵グループの副社長の”葵 洋子さん”隣の可愛い彼女は”葵 結衣さん”隣のHIROの奥さん隣はもちろんHIRO君で次は知ってるはずの秋野くん」って紹介した。


女将さんは疑問な顔をした「HIRO君の奥さん?・・・」根津木さんは「あ・・・それオフレコ。ついでに彼女は別名”白鳥 葵ちゃん”」ってさらに付け加えた。


女将さんは私のほうを見て「あ・・・貴女ってファッション雑誌のジュジュって言うのの表紙モデルじゃないですか」って言うと根津木さんが「あれれ、女将さんそんな雑誌見るんだ」って告げた。


女将さんはにっこり微笑み「失礼ですわよ私でもそれくらいは読みますわよ」って笑ってけど「実は親戚の子が持っているのを見て私もほしくなったの初版から全部ありますわよ」って告げると。


お義母さんが「ありがとうございます。その本は私が企画しましたの。ティーンが主なターゲットだけど企画によってはもう少し年齢をあげたほうがよいのかしらね」って今度はお義母さんが話し始めた。


女将さんは「是非お願いします。書店で購入時にすこし躊躇いが出ます」告げるとお義母さんは「良いお話が聞けました。企画を練ってみますわ」って微笑んだ。


女将さんが世間話で盛り上がっているところをかなり若い女性の仲居さんが生ビールと食前酒を持って現れました。そしてひろくんを見るなり「あ」って小さな声を上げ女将さんに注意された。


しかしさらに私を見て思わず「葵ちゃん」って言ってしまい女将さんは苦笑してしまい「すみません」って私たちに頭を下げた。


そして二人で出て行ったのを見て根津木さんは「たぶんこってりしかられるんだろうな・・・」私たちは苦笑するしかなかった。


根津木さんは「仕事も順調でしたし、乾杯をしましょう」って仲居さんの持ってきたビールで乾杯しようとして「結衣ちゃんはウーロン茶でね」って乾杯の音頭をとった。


「今日はご苦労様でした。では乾杯」って美味しそうに根津木さんはコップのビールを一気に飲み干した。ひろくんとお義母さんは1/4ぐらい秋野さんは半分ぐらいを飲んでグラスを置いた。


しばらくすると女将さんと数人の仲居さんが料理を運んでテーブルの上に並べ料理の説明を始めた。なにやら季節の魚や野菜などの会席料理で聞いてもほとんど判らない。


ハモ落しやすずきのあらいの魚料理と夏野菜の創作料理ってことだけは聞き取れた。ビールで盛り上がる大人を尻目に黙々と食事した。どれもこれも美味しく結構な量を食べることが出来た。


ひろくんは秋野さんに捕まって管を巻かれている。お義母さんと根津木さんは営業?の話で盛り上がっている。後で聞いたんだけど秋野さんが私を何とかしようとしていたらしいけどひろくんが食い止めていたってことらしい。秋野さんは酒癖があまり・・・らしい「ひろくんありがとう」


私がトイレに行くと女将さんに声を掛けられ「ごめんなさい、内の若い仲居が貴女を見て舞い上がったらしくて」って頭を下げてきた。


ファッション雑誌”ジュジュ”は凄い人気で発行するたびに増刷しているんだそうでそれだけ私の顔も皆に判るってことらしい。


私は「大丈夫です、気にしていません」って答えた。すると女将さんは「皆に内緒なんだけど」ってすまなさそうに三枚の色紙を差し出して「従姉妹の娘が貴女の大ファンで本当はいけないし女将失格って事なんだけど、私と従姉妹の娘とさっきの仲居の分なのだけどお願いできないかしら」って言って手を合わせた。


サインなどスタジオで初めて2枚書いただけなんだけど、どうしようって迷っていると後ろから「結衣ちゃん俺からもおねがい」って声が聞こえ振り向くと根津木さんが立っていた。


仕方が無く「ジュジュ(はあと)白鳥 葵って書いて宛名を聞いて**さんへって何とか書き上げ女将さんに手渡した。


女将さんはものすごく喜びいつの間にかさっきの仲居さんが女将さんの後ろに居て深々と頭を下げた。私は恐縮しきりだ・・・。


部屋に戻るとひろくんに「結衣、遅いよ」って抱きしめられ叱られ?た。


根津木さんも帰ってきて「秋野さんが前後不覚になる前にお開きにしましょう」って千鳥足の秋野さんを肩で支え待たせてある車まで運んだ。


いつの間にやら白石さんが車に乗ってリムジンの後ろで待機していた。私たちは根津木さんにお礼を言って白石さんの車に乗り込み岐路に着いた。


騒がしい夏の出来ごとだった。




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