体育祭は私が主役?
体育祭は私が主役?
夏休みも終わりこれから体育祭に向かって練習をする。
体育委員の渡辺さんがメインにクラス委員である青山君と私で進行を努めメンバーを決めて行く、この学校は個人戦が少なく団体戦が主におこなうんだ。
種目は短距離・リレー・障害物競走・借り物競争・男女ペアの二人三脚などの定番が多い。
なぜか女子のダンスや男子の機械体操まである応援合戦も得点のうちだそうで、しかも中学生と合同でおこなうユニークなシステムになっている。
一年生は中学3年生と二年生は中学2年生と三年生は中学1年生とペアを組む、結構大変だが楽しいらしい。
体育委員の渡辺さんとクラス委員の青山君が次々に選手を決めていく。
クラス委員は進行をやらなければならないので通常は参加しないがあっちこっちのサブにはなっている。
それでも私は短距離と二人三脚は出なければならない。私って小さいけど(身長149cm)以外と足は速いんだ。
この足のおかげでチカンから何度も逃げたことがある。
100メートルを12秒台後半から13秒前半で走ることができる。さすがに大会に出る選手までは行かないが・・・。
私たちは結構遅くまで練習をする。私たちは、いつも片付けなどで一番最後になってしまう。
体育委員の渡辺さんとクラス委員の青山君そして私の誰か一人残って変わり番に先生に帰りの挨拶をする。
今日は私だ。職員室に入ると田中先生が居ない、きょろきょろしているとB組の田石先生が「あなたはどのクラス?」って聞かれたので「一年E組です」って答えると。
田石先生は「田中先生は用事があり先に帰ったから、副担任の葵先生に連絡しなさい」少し考え「たぶん準備室に居るはずです」って教えてくれた。
準備室に着くと扉を叩く。トントン「葵先生はいらっしゃいますか?」言うと、中から「おーい入れ」って聞こえ、「失礼します」って私は中に入った。
中はひろくんしかおらずパソコンに向かってなにやら打っていた。
顔を上げて「結衣か、どうした?」私は「今日は終わりましたので連絡に来ました」って先生に言う口調で言うと。
ひろくんは立ち上がり部屋に鍵を掛けると「終了の連絡ご苦労様・・・これで邪魔者は入れない」突然頬にキスされて「そこに座ってて、終わったら一緒に帰ろう」ってソファーを指差して言った。
私は「誰かに見つかっちゃうよ」って言うと、まだ少しかかるから、そのころには誰も居なくはずだから大丈夫って、又パソコンに向って仕事を続けた。
ひろくんの言ったとおり、帰るころには生徒は全員いないし先生もほとんどの人が帰宅していた。
ひろくんは堂々と、私は誰かに見つからないようにドイドキしながら車のところに向かった。
私たちは誰にも会わず車にたどり着き、ひろくんの車で帰路についたが、時間も遅くなったので途中遠回りしてファミレスで食事をしてから帰ることにした。
ファミレスに入るとき、私は学生服ひろくんはスーツで入ったけどあまりじろじろ見られる様子はなかったので少し安心して食事をした。
それからは、私が連絡係りのときは、ひろくんが居残り、田中先生に終了を伝えた後でも、私は準備室に寄り、一緒に帰ることがしばしばあった。
一緒に帰れることで、プチデート?体育祭の練習もいいかな?なんて思いながら、運転するひろくんの横顔を見ながら思った。
俺は結衣が連絡係りのときは極力学園に来る様にして一緒に帰った。こんな機会でもないとなかなか一緒に帰れない。
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今日は体育祭です。
生徒会の運動部実行長が宣誓を行う。最初は学年別短距離走だ。私は高校一年女子の部に出場する。
私の番が回ってきてステートラインに並ぶ。
用意ドン スタートは遅れたがぐんぐん加速してゆく。裕子たちの声援を受けながら一番でテープを切る「やったー」E組に向って手を振ると皆が手を振ってくれた。
女子学年別一位なので決勝の100m走女子の全体の部に出場が決まる。
次々と種目が進み、組み体操の時間になる。これは男子が行う結構ハードだ。うちのクラスも順調にプログラムを進める。組んでいる一番上に上がった青山君が両手を挙げる。
「あ!」下に居る日比野君ががバランスを崩すと、青山君が崩れて落ちる。どうも落ちたときに足を挫いたみたいだ。
びっこを引いて医務室に運ばれていった。医務室に行くと青山君が申し訳なさそうに「御免、足挫いた二人三脚代理探して」って手を合わせた。
私は青山君とペアを組み二人三脚出場の予定だったんだけど。あわてて相手を探さなくっちゃならない。私は「うん分かった、大事にしてね」って言ってクラスに戻り相手を探した。
運悪く都合の好い人は二人三脚前後に出場が決まっており相手は誰も居ない。
困っておろおろしていると、ひろくんが「どうした」って聞いてきたので先ほどの事情を話した。
ひろくんは「わかった代わりに俺が出てやるよ」って言って出場者リストを変更しにいってくれた。
私は思わず「日比野君GOOD・JOB」って思ってしまった。青山君ごめんなさい。
競技が始まる前に慌てて、ひろくんと足をつなぎ二人三脚の練習をした。いち・に・いち・に・・・スムーズに走れる、息はピッタリだ。(やっぱ夫婦なんだって思った)
二人三脚はリレー形式で私たちはアンカーを勤める。里美が羨ましそうにこちらを見ている。
二人三脚リレーが始まり私たちは足をつないでバトン位置で待機する。周りからの視線が痛い。各所から冷たい視線を浴びる。
競技のスタートだ、E組は3位から5位の間をうろうろし、私たちに”たすき”が渡ったときには5位だった。
がんばれーの声援でいち・に・いち・に、と声を掛け走り始める。私たちは相性がよく、ぐんぐん加速し皆を次々に抜いていく、そして最後の直線で一位を走っていたA組をかわしゴールする。
ばんざい一位だ!!二人でガッツポーズをした。ひろくんのファンの視線は痛いけど、ひろくんと一緒に走れてよかった。
残りの私の出場は短距離女子全体の部になる。各学年のトップが走り全員で六人でスタートだ。いわゆる女子の一番を決める競争だそうだ。
スタートラインに並んで用意ドン一斉にスタートを切る、今度はいいスタートを切れたぐんぐん加速するけれど隣の選手が私の前でさらに加速して離れていく。
ゴールしたときは3メートルぐらい離れてゴールしたけど何とか2位に入ったなんと3位とは0.3メートル差でぎりぎりだった。
一位は国体代表の3年生の小澤 舞選手だった。私は皆に「善戦したね」っていわれた。小澤先輩は全国でもトップクラスのスプリンターなんだそうだ。
最後に男女別リレーで全競技は終了だ。これには私は出場しない。
各競技の1・2・3位まではちょっとしたメタルがもらえる、私は1位が2個2位が一個もらえた。ひろくんも私と一緒に出たので1個貰った。
私はメダル立てを購入し二人のメダルを飾った。とくに二人三脚のメダルはペアメダルでよい記念になった。
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次の週に学園に行くと上級生に呼び出され、校舎の裏へつれていかれ、先生と一緒に走った二人三脚の件で「おまえ、調子こいてんじゃなわよ」って暴力は受けなかったけど怖い目で脅された。
いじめ?かな・・・暴力は受けなかったので、ひろくんには心配しない様に黙っていよう。