送り迎えは”パス”
送り迎えは“パス”
朝の準備を終え出かけようとしていると、ここからはちょっと遠いから送って行くよっていってくれた。
この家からはそれなりに距離がある。出かけるにはすこし時間が有るので、すこし時間をつぶしてから車で行く時間に合わせるつもりだ。
そして、まだすこし早いみたいだけど送ってもらうことにした。
あ!車が違う、今度のは前より大きい。助手席に乗り込むと、ひろくんが扉を閉めてくれて、運転席に戻って車をスタートさせた。
前の車より静かだ。音は前の車のほうが心地よい。前の車は?って聞いてみると、友達がどうしても貸してくれって言ったので、しばらく貸すことにしたとのこと。
前の車の方がすこし好きかな、でも前の車は2人しか乗れないけど、この車は何人か乗れるので両親が来ても大丈夫かなって思った。
学校に着くと車を降りて、門のほうに歩きながらひろくんに行って来ますの手を振った。ひろくんの車が走り去ってから足早に教室に向かった。
後ろからポンと肩をたたかれた。同級生の大林 菜緒子だ「奈緒、おはよう」「結衣おはよう」って挨拶をした。
菜緒子が「ねえねえさっきの人だあれ?」って聞いてきた。私は、思わず「お父さんの会社の人なの、たまたま方向が一緒なので送ってもらったの」って、嘘をついてしまった。
私が車を降りたところを見られていたんだ。
教室で席に座っていると、なぜか次々にひろくんの事を聞いてくる。
何人かに見られたようで、いつの間にか広まっているようだ。結構早い時間に着いたはずなのに、以外と大勢の人に見られちゃったみたいだ。
男の子は「彼氏?カッコいいじゃん」って言ってからかうし、女の子は菜緒子に言ったことを言うと、「私に紹介して!」って言ってくる。
何気にかっこいいらしい。やきもちをやきそうだ、でもちょっとうれしい。
半日の始業式が終わり門のところへ歩いていくと、見たような車が止まっている。近づくと、やっぱりひろくんが降りてきた。
私は、周りにじろじろ見られながらひろくんの車に乗った。顔が火照ってる、どうも赤くなっているようだ。
帰宅途中に、ひろくんに「もう送り迎えはいい、電車で通う!」って宣言した。だって皆にじろじろ見られ恥ずかしいんだもん。
それから私は電車通学に切り替えた。電車の中は混んでいるけど、始業式の日のようになるのはいやだったから我慢する。
しばらくすると”からかいや冷やかし”などは治まってきた。だけど菜緒子だけは時折聞いてくる。
「ねえ、彼氏はおくってくれないの?」なんてね。私は「う・うん」っていつもあいまいに答えるしかなかった。
いつかは話さなきゃならなくなるのかな。そんなことを考える間につきのイベントが近づいてきた。
それはセント・バレンタインデーって言うイベントだ。