絆創膏 38
「大丈夫です。猫舌なんで」
そう言って一口飲む。ちょうどいい温さだった。
「ハーブを育てるのに使ったんだ」
「え!」
ぼそっと呟かれ、遅れてびっくりした。
「ハーブだけじゃない。ミニトマトとか」
ええ──意外。
「スーパーでも普通に種売ってるから、簡単そうだし試しに。ワタルも喜んでたよ」
「料理、に使うんですか?」
「ああ、大したもんは作れないから、スーパーの総菜で済ませたりもするけど、パスタは簡単だから、良く使ったな。俺が栽培しても一応はハーブに育った」
そう言って宍倉さんが薄く笑う。
ベランダの手すりに凭れて、二人で紅茶を飲みつつ日常を眺めながら休日を過ごしてる。部屋の中では子どもがレゴで遊んでて。
何だか──
玲央とは会ってから違和感が広がるばかりだったのに。
宍倉さんは全く逆で──
「あそこにはまたマンションが建つんですかね」
保育園に向かう途中の足場が組まれた建築物を指さした。
「ああ、そう。うちの会社が請けた案件」
そういえば、部屋にある棚のブックホルダーに技能検定一級という本が立てられてた。
「じゃあ、あそこでいつも作業されてるんですか?」
その割には迎えが遅いなとは思った。作業は暗くなってからはできないと聞いてるから。
「いや、あそこじゃない。東急多摩川線の武蔵新田」
降りたことない駅だからピンとこないけど、一時間くらいかかりそうだ。
今さらだけど、手すりを掴んでる宍倉さんの指に巻かれた絆創膏が気になった。
「その絆創膏は作業中の怪我ですか?」




