絆創膏 33
「何で宍倉さんが謝るんですか?」
日本人はともかく頭を下げるのが好きだから、自分が悪くないときでも謝って、腰の低さでマウント取り合うような不思議な国民性だけど。
宍倉さんみたいに強面系で身体も大きな人に頭を下げられると重々しくて、かえって自分が悪いようで居たたまれない。
「ワタルの担任の先生だから、つい甘えてお願いして、家まで連れて来てもらってしまって」
「そんな……俺の方こそすみません。軽く受けて短い時間なのに、ワタルくんに怪我をさせてしまって」
「何言ってるんだ! 先生が悪いわけないだろう」
これは和的美徳文化の謝罪の無限ループにはまりかけてる。
俺も死ぬほど日本人体質で腰の低さに対しては、さらに低姿勢になってしまうから。このままでは──共用スペースだから住民の視線が気になる。
「パパ……おうちに入りたい」
不毛なループを断ち切ったのは幼気なワタルくんの素直な一言だった。
頭を下げつづけていた宍倉さんが顔を上げてワタルくんと俺を交互に見た。
派手なツートンツーブロがライオンのたてがみに思えた。
けど強い雄の象徴じゃなくて、逆に項垂れ感を演出してしまっていた。
今度は俺が宍倉さんとワタルくんを交互に見る。
どうしてこんなに胸がキュンと締め付けられるように痛むんだろう。
「あ!……」
キイガチャ
「あ、あの……」
腕を引かれたと思ったら俺は宍倉家の扉の内側にいた。上下左右を確認したから間違いない。
宍倉さんが玄関マットの上にスリッパを用意してる。ちょっとフローラルな香り。




