絆創膏 32
何だか凄く心配そうな様子。
自販機の明かりで泣き顔を見られた夜の話を持ち出してきたときと似てる。
俺はまた辛そうな顔してるのかな。
「すいません……ワタルくんが転んで怪我してしまって」
違う。そうだ。気にすべきはワタルくんの怪我のことだ。
「え? ああ、転んだのか。ワタル、気をつけないと」
宍倉さんがしゃがんでワタルくんの傷を見る。
「俺がちゃんと見てなかったから……怪我をさせてしまったんです」
凄く泣きたくなった。
一つ一つは大したことじゃないのかもしれない。
集まって大きな雪玉になってぶつかって、壊れて。
また雪玉になってぶつかってくる。
どうして色んなことがうまくいかないんだろう。
避け方が下手過ぎるんだろうか。
「何謝ってんだ。姫せんせいのせいじゃない。俺が悪いに決まってる。ともかく乗って」
「え?」
腕を引かれてあっという間に扉が閉まる。
ワタルくんが五階のボタンを押していた。
まるで親子の連携プレー。
拉致られるように「あ……」という間に五階について、チンと鳴って扉が開いた。
この間、他の住人は乗ってこなかった。
共用スペースの通路は屋外で、エレベーターから左側に数えて三つ目の部屋の表札に宍倉と書かれていた。
宍倉さんがポケットから鍵を取り出し、鍵穴に差し込んで右に回す。
「宍倉さん……俺は」
まさか部屋に俺を入れるつもりじゃ。
部屋に上がるという流れは止めないと。
保育園の規定では、明確に保護者との私的接触は禁止されてない筈だけど、知られたらマズイ気がする。
「先生! すまない」
鍵を回しきってノブを下げて押して開けてから宍倉さんが頭を下げた。
長身だから頭を下げても俺の目線よりも顔が上にある。




