絆創膏 31
公園で待っててというつもりで預けたんだろうに勝手に連れまわしたみたいになって宍倉さんに怒られないかな。
だから部屋の前まで行きたくないんだよな。
ワタルくんの膝の怪我をチラっと見る。
本人は痛み忘れてるみたいだけど絆創膏貼ってないから剝き出しで痛々しい。
ちゃんと見てなかった俺が悪い。謝らないと。
エレベーターの扉が開いた。
下向きの目線の先に黒光するワークブーツとグレーの迷彩柄パンツがあった。
右手に昆虫のケースを持ってる。
あれ、見覚えある、と視点を上げたら青と赤のツートンツーブロの上で止まった。
宍倉さんの大きく見開かれた目と、俺とワタルくんの三対の目が交差する。
でもすぐに宍倉さんの目線が逸れた。
「ああ……そうだよ……加奈子。わかってる、わーってるって。それは俺が取りに行くから。明日なら大丈夫なんだろ?」
宍倉さんは耳にスマホを当てて話していた。
加奈子——電話の相手は女性。
別れた奥さん、と考えて、宍倉さんのこと何も知らないんだとテンションが落ちた。
離婚したのか死別したのか、まったく別の理由があるのか。
奥さんじゃなくて、今付き合ってる彼女だったりして——
宍倉さんがじっと俺を見てる。
スマホは左耳から外されて、手と一緒にぶらりと下におろしてた。
「……あの」
「姫せんせい。どうしたんだ」
エレベーターから降りて長身を屈めて俺の顔を覗き込む。




