絆創膏 30
幼虫飼育用の土は家にあるのか、というようなことを話してるうちにマンションの前まで来てしまった。
エントランス脇のゴミ置き場が目に入りフラッシュバック。
この辺りで初めて宍倉さんと会った。っていってもたったの三日前だけど。
怖い人に絡まれたと思ったら、うっかり落としたドロシーの衣装を拾ってくれたんだよな。
ドロシーの衣装──
「僕んち五階なんだよ」
頭痛の種でしかないもっとも重要だけど考えたくないこと思い出したらワタルくんに急に強く腕を引かれた。
「え、でも……」
まさか部屋の前まで?マンションに着く前に途中で会うと思ってたから想定外だ。
部屋まで行ったからって何も起こらないだろうけど。
「姫せんせい! 早く!」
ワタルくんがさらに腕を強く引く。子どもだから振り払おうと思えばもちろん出来るんだけど、そうさせない気合というか気迫というか。
逆らえない。
とりあえず五階だからエレベーターの前まで大人しく連行されてしまった。
エレベーターは奇数階と偶数階で二基。
ワタルくんが上に行くボタンを押す。四歳なのに慣れてるな。
エレベーターが降りてくるのを待つ間。
住人を見かけるたびに挨拶する。
俺とワタルくんは、マンションの住人から見たらどういう関係に見えるんだろう。
父親、いや年が離れた兄?
それとも男に見えてなくて母親か姉?
四歳の子ども連れてても不審な目は向けられてない。
まあ父親に託されて面倒見てるんだし、今日は休みとはいえ保育園では担任だから警察には言い訳立つけど。




