絆創膏 27
「じゃあ直ぐに戻るんでワタルのことよろしくお願いします」
そう言うと宍倉さんはジェイボードを抱えて公園の入口の方に走って行ってしまった。凄い信用されてる。担任の保育士なのに信用されてないのもヤバいけど。
「良かった。幼虫飼えるみたいだね。パパが戻ってくるの、さっき幼虫見付けたとこで待ってようか」
「うん。先生ありがとう」
休日でも平日でもワタルくんにとって俺は変わらない。いつでも姫せんせい。子どもは裏表ないから癒されて、不安を忘れられる。
「やっぱり先生がママだったらいいのになあ」
嬉しいけど困ってしまうことをワタルくんがまた呟いた。宍倉さんに良く似た顔で。
ワタルくんのお母さんのこと、詳しくは聞けない。
だけど少しは気持ち分かる。俺も父親を高校のときに病気で亡くしてるから。
ただ五十前だから逝くには若かったけど、高校からだから母子家庭といえる期間は短かった。
ワタルくんのような幼い子なら寂しいと思うのは仕方ない。
少しずつ色が違う落ち葉のグラデーションから水色の空に視線を上げた。
いきなり視界が広がって別世界にワープしたようだ。
宍倉さんは凄いな。ママを欲しがる小さな子の寂しさも背負ってるんだから。
誰もママの代わりにはなれない。たとえ父親でも。
だから寂しさの分だけは、ずっと足せないのに半分の背中で背負ってる。
「半分こかあ。だからって俺をご指名はないだろう」
半分って意味では適任なんだけどな。
今日は少しの時間だけで宍倉さんの温かい側面に触れられた。
宍倉さんまだかな、と思って公園入り口付近を探す。




