絆創膏 25
「ワタッ……ワタルくんは!」
マフラーの熱で蒸されて逆上せてしまいそうだ。
この状況から俺を救えるのはワタルくんだけだ。
ぶんぶん首を振り回して姿を探す。
「ワタルはあっちで遊んでる」
宍倉さんの視線はちょっと遠くに逸れて俺の上にすぐに戻った。
「姫せんせーい」
ワタルくんの声だった。向こうから勢いよく走ってくる。
ぶつかるように脚に抱きつかれた。
「あっちにカブトムシみたいのがいた!」
「え? カブトムシ?」
「うん。あっちあっち」
ワタルくんに手を引かれる。柔らかくて小さな手なのに可愛い教え子には逆らえない。
ここから立ち去るタイミングを逃してしまった。
「こんなに寒いのに生きてるカブトムシ?」
「ううん。幼虫」
冬まで生き残った逞しい成虫じゃなくて幼虫らしい。公園の中央の寛ぎスペースにはクヌギやコナラが植えられている。
地面にしゃがむワタルくんが落ち葉をめくる。
ふかふかの土と落ち葉の布団の間にカブトムシの幼虫がいた。
「奇跡みたいな確率だね。うちで飼うの?」
尋ねるとワタルくんの目がパッと輝いた。
広い公園の自然の落ち葉の下で偶然見つけるなんてミラクルだ。
これこそ運命の出会いだね、と付け加えようとしてやめた。
「パパ。カブトムシの幼虫」
小さな手のひらに載せて、いつの間にか後ろで様子をうかがっていた宍倉さんに見せる。
「虫かご持ってきてないだろ」
「パパは虫が嫌いなんだよ。だから弱虫なんだよ」
「ああ、そうだよ。幼虫なんて触りたくねえよ。ワタル、だったら手づかみで持って帰んのか?」
ワタルくんと宍倉さんに挟まれて、左右で飛び交う会話に笑ってしまう。




