絆創膏 19
押し入れから掃除機を引っ張りだす。
ため息の長さは憂鬱の度合いを示してる。
こんなとき——
数か月間、玲央の存在がずっと癒しだった。
『ドロシーの友達』というチャットルームは、あれ以来覗いてない。
玲央を失ってできた穴は大きい。
スケジュールの空白が空白のままでも埋まってる気になれたから。
「ともだち」はいる。でも大学時代にできた「ともだち」にはカミングアウトしてない。
ゲイと明かすのは同じゲイに対してだけ。
だから俺の場合はネットの中だけ。
掃除機の吸引力を強にして玄関の方からかけていく。
フローリングは手ごたえが薄いけど楽だ。
新たな出会いを求めて同性愛者向けの掲示板に書き込むエネルギーはない。
ヤリ目的じゃなくて真面目なパートナー求めてるのもあって。
俺は出来るだけそういうとこで吐き出してたつもりだったのに。
そういう場が信用できなくなったっていうより、アカ名変えても本音で書き込んだら玲央に見られる可能性もある。
向こうだって俺のこと悪く書き込んでるかもしれない。
へたに覗いて変悪口みたいな書き込みを目にしてしまったら。
それとも、気が合う相手と思って話してたら実は玲央の知り合い。いや、サイアク本人だったらサイアク。
ネットで明かすプロフはいくらでも嘘がつける。性別も性癖も。
「あ!!」
掃除機が変な音を立てた。慌てて電源をオフにする。固いもんを吸ってしまったらしい。ベランダに出て腹を割るようにダストボックスを開いた。
キラキラな埃じゃなくて、もっとグレーな埃が散る。臭い。
ペットボトルのキャップだった。コンビニで買ったお茶の、見当たらないまま捨てた。
探しても見つからなかったのに。
「まさに吸い寄せられたんだな」
開いたついでに埃をゴミ袋に捨ててから吸引を再開する。




