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1+はんぶんこ✕2  作者: 春野わか
80/199

絆創膏 19

押し入れから掃除機を引っ張りだす。

 ため息の長さは憂鬱の度合いを示してる。

 こんなとき——

 数か月間、玲央の存在がずっと癒しだった。

『ドロシーの友達』というチャットルームは、あれ以来覗いてない。

 玲央を失ってできた穴は大きい。

 スケジュールの空白が空白のままでも埋まってる気になれたから。

「ともだち」はいる。でも大学時代にできた「ともだち」にはカミングアウトしてない。

 ゲイと明かすのは同じゲイに対してだけ。

 だから俺の場合はネットの中だけ。

 掃除機の吸引力を強にして玄関の方からかけていく。

 フローリングは手ごたえが薄いけど楽だ。

 新たな出会いを求めて同性愛者向けの掲示板に書き込むエネルギーはない。

 ヤリ目的じゃなくて真面目なパートナー求めてるのもあって。

 俺は出来るだけそういうとこで吐き出してたつもりだったのに。

 そういう場が信用できなくなったっていうより、アカ名変えても本音で書き込んだら玲央に見られる可能性もある。


向こうだって俺のこと悪く書き込んでるかもしれない。

 へたに覗いて変悪口みたいな書き込みを目にしてしまったら。

 それとも、気が合う相手と思って話してたら実は玲央の知り合い。いや、サイアク本人だったらサイアク。

 ネットで明かすプロフはいくらでも嘘がつける。性別も性癖も。


「あ!!」


 掃除機が変な音を立てた。慌てて電源をオフにする。固いもんを吸ってしまったらしい。ベランダに出て腹を割るようにダストボックスを開いた。

 キラキラな埃じゃなくて、もっとグレーな埃が散る。臭い。

 ペットボトルのキャップだった。コンビニで買ったお茶の、見当たらないまま捨てた。 

 探しても見つからなかったのに。


「まさに吸い寄せられたんだな」


 開いたついでに埃をゴミ袋に捨ててから吸引を再開する。

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