絆創膏 16
「姫先生、けっきょく何してたんですか?」
ママたちがいなくなった途端に静かになって、花城先生が無邪気に顔を近づけてきた。
「何も……してないですよ」
さすがにちょっとイライラする。外灯の明かりから遠いのが幸い。かなり仏頂面のはず。
だってここ数日間で食らったダメージは、ボクシングに例えたら再起不能のKO負けだから。
花城先生の登場で、ママたちの無神経な会話が中断したのは良かったんだけど。
ダメージの傷みに耐えながら、今度は無邪気な天使の追及に耐えなきゃならないなんて。
「暗くて姫先生の顔は見えないけど気持ちは伝わりますよ。さっきのママさんたちはあざらし組の保護者ですよね」
天然で鈍そうに見えて、さすがにそこら辺りは感じ取ってくれてるのか。
タイミング悪いことに気づくのは、いつも遅いけど。
「そうなんですよ。中心になってるママさんはマイカちゃんという子のママで、あざらし組の中では声が大きいというか……」
チャリを引きながら夜道を一緒に歩く。花城先生は徒歩だから、ホントなら挨拶してこの場で別れてるとこだけど。
「知ってます。朝、いつも園長先生と大きな声で話してるから」
「花城先生も気になってたんですね」
人の声には温もりがある。心が冷えてるときにはカイロみたいにじんわり暖まる。
恋人同士のように近い距離にいなくても、人が側にいるだけで安心する。
「やっぱり、ああいう感じって。高校の時にもあって。女同士で集まると周りの目を忘れて話はずんじゃって。女子の声は高いから、周りにはうるさく聞こえるし、男の人は特に嫌がるだろうなって、大人になってから分かりました」
こういう場合、ノンケなら同性といた方が安心するんだろうけど。俺の場合は、異性の方が友達感覚だから。




