絆創膏 15
「あたしは朝のBLブレイクって名付けてる」
「もう、ヤダあ」と、また笑い。
そんな。
俺のことが話題になってる。
ここ二日の宍倉さんとのやり取りをこっそり盗み見て、そんな妄想を繰り広げてるなんて。
地面に足が生えたように体が固まって動けない。ネタにされてるの知って、顔色変えずにママたちに挨拶なんてできない。
早く、早く、話が終わって帰ってくれればいいのに。両手に白い息を控えめに吐きかけながら様子をうかがう。
「ひーめせんせーい! おっつかれさまでーす!」
「うわあああ」
後ろから飛んできた元気な声が空気を切り裂いた。
背面は無防備で、不意打ちに大声を上げてしまう。
状況も時間帯も関係なく元気な声は花城先生だった。
よりによってと思っても仕方ない。
花城先生の場合、悪気がないけどタイミングが悪いのが悪いんだから。
ママたちの視線がこっちに向けられる。
「ヤダあ。姫先生、びっくりさせちゃいましたぁ? そんなに驚かなくたってえ。あっちから歩いてきて、姫先生がずーっと動かないから。何してんのかなあって?」
ママたちの会話を知らないんだし、別のクラスを担当してる花城先生に空気読めというのも無理はあるけど。
もっと前からこの場にいたとしても空気読めるタイプじゃないし。天然だからなあ。
ともかく、俺が前からここにいてママたちの話を聞いていたというのがバレてしまった。
「あら……花城先生と姫先生じゃないですか。お世話になってまーす」
マイカちゃんママの笑顔はさすがに気まずさで引きつってた。白色の光の加減か、イタリアの仮面みたいで不気味だ。
「あは……そろそろ帰らないとね。じゃあ、また明日もよろしくお願いしまーす」
他の二人のママたちは、もっと演技が下手だった。
でもギリギリ俺に会話を聞かれてないという風を取り繕って駐輪場から出ていった。




