絆創膏 11
「そういえば、青葉、ですよね」
「え?」
周囲の喧騒に紛れず、低い声がクリアに響いた。
俺だけにしか聞こえてないような感じだった。
宍倉さんをあらためて見上げる。
「先生の名前」
「あ……」
「青葉、ですよね?」
頬にじわじわ熱がのぼってくる。
それが?そうですけど?、と。冷静に切り返せない。
口元が薄く笑ってる。細めた目でじっと見てる。
「保育園からのプリント見て知ったんだよ。会う前からね。担任の先生がどんな人か気になるから」
「男か女か、分かりづらい名前ですもんね。会って男と分かってびっくりしたでしょ。嫌いなんですよ。自分の名前が」
ホントに嫌い。二十歳越えても顔が女みたいで体格も華奢なんだから、小さい時は女子と良く間違われてた。
「嫌いなんだ。へえ……俺は好き」
「え?」
顔が熱くなりすぎて目がうるんで宍倉さんの姿がダブってる。
「青葉っていい名前じゃないですか。響きもキレイだ。先生に合ってる。だから俺は好きなんだ」
最後の部分が強く聞こえたのは気のせいだろうか。
もう、心臓がバクバク跳ねて自分をコントロールできない。
これ以上加熱されたら鼻血を吹き出してしまう。
何て返答したのか覚えてない。
返答してないかもしれない。
宍倉さんが去ってすぐに時計を見た。
針はあまり進んでなかった。
宍倉さんに対面してる時間は一日の内のたった十分程度で。
でも密度が高過ぎて、もっと沢山の時間を過ごしてるように感じるのかもしれない。
濃密だから、その後の時間が平坦に感じられた。




