絆創膏 10
だったら。俺が——
友達だったら。代わりに縫ってあげられるのに。
だけど母子家庭だって、両親いる家庭だって色々用意するのは大変だから。
宍倉さんだけ特別扱いするわけにはいかない。
「縫い目キレイでなくても大丈夫ですよ。手縫いだと大変だとは思いますけど。どうしても難しいならオーダーで作ってしまうという手もありますし」
口から出る言葉は心とは繋がってなくて。
保育士としては、どうやったら用意できるか教えてあげることしかできない。
「途中まで縫った。けど……まあ、考えてみるよ」
昨晩のトマトでの光景が右斜め上にチラつく。ワタルくんが好きな生地を選んで、笑い合ってた。
俺は宍倉さんのこと良く知らない。ワタルくんとは長い時間過ごすけど。
たった数日で、ライオンみたいな人の色んな表情に触れて、その奥にある気持ちを探ろうとしてる。
馴れ馴れしいのは向こうじゃなくって、ホントは俺?
物理的には距離を保とうとしてるのに、心は前に行こうとしてる。
そういう物欲しさが顔や態度に表れてるのかな。
「じゃあ、姫せんせい。ワタルをお願いします」
もう話は終わったと、軽く頭を下げてから向けた大きな背中。
その背中を見送れば、今日は会うことはない。
互いの住居が近いといっても、明日も明後日も。きっと。
昨日の夜はトマトで見かけたけど、俺が一方的に覗いてたの宍倉さんにはバレてないから会ったことにはならない。
「ワタルくんはライオンをやりたいと言ってました」
今のタイミングで思い出すなんて。引きとめる形になってしまった。
「それ、聞いた。オズの魔法使いだろ?」
振り返る宍倉さんの動きはゆったりしていた。
この人が、焦るとこ想像がつかない。
「パパみたいだから、なんでしょうね」
話すスピードも意外とゆっくりで、目を逸らすことがない。
「オズのライオンと似てるのは臆病なとこだって言ってなかった?」
「……」
しまった。気まずい。




