絆創膏 9
言葉を探して泳いだ目が宍倉さんの指先に止まった。
左手の指の数本に絆創膏を巻いている。
人差し指、中指、薬指。
「その指どうしたんですか?」
自ら宣言して引いた線を忘れて真っすぐ顔を向けた。
怪我くらい誰だってする。包帯よりは絆創膏は軽傷の印象だけど。
人差し指から薬指まで三本もとなると多すぎるし痛々しい。
「……仕事で。いや、違う……」
驚いた。宍倉さんが俯いた。絆創膏だらけの手を握って隠すように後ろに下げた。
笑いたくなって、なぜか切なくて泣きたくなった。
ふわっとして気持ちいい。
でも胸の辺りがきゅっとして苦しいような不思議な感覚に包まれる。
「宍倉さん、指の怪我は布団カバーを縫っててやっちゃったんですか?」
自分を守ろうとして掛けた鍵が外れて訊ねていた。
緩んだ口から出てしまったんだ。
線を引いておきながら、それを自ら踏み越えてしまった。
昨日の自分の考えを借りれば、知ったからってどこまで踏み込むつもりなのか、責任持てるのか、なのに。
「そうだ。さすが先生だな」
今度は微かに笑ってる。少し考えれば誰でも分かることを言い当てただけだ。
昨日、一日ワタルくんと接していて感じた。
やっぱり父子だ。
表情や仕草まで良く似てる。
「ミシンは無いんですか? 手縫いだから?」
少し踏み込み過ぎだろうか。
「ミシンがあっても使い方が分からない」
例えば母親とか、身近に頼める人がいたら頼んでるだろうし。
「縫ってくれるとこ、有料でありますよ。でも長方形に縫って、布団入れるとこだけ開けとけばいいだけだから」
その簡単なことが出来ないから絆創膏だらけなのに。罪悪感とちょっと優越感。
「ミシンを貸し出してるカラオケ店もありますし」
「ミシンが使えないんだ」
そうだった。




