絆創膏 8
面倒なマイカちゃんママは漆原先生が適当にあしらい、子どもを預けたあとも物足りないのか園長先生と話す声が聞こえてくる。
俺が他の保護者の対応をしている間に宍倉さんは廊下での準備を終え、さらに教室の中に入って、壁際の縦長のロッカーに必要な物をセットしていた。
俺にちょうど背を向ける形で。
本来なら連絡帳を貰って健康状態を保護者から聞いた上で預かるんだけど。
宍倉さんは他の保護者よりも早く来てたのに、何故かラッシュの最後になってしまった。
まだ要領がつかめず、支度を先にしなきゃと考えて追い越されたんじゃないのか。
本来の流れとは違いますよ、とは注意しづらい。
あまり焦ってる様子はないからいいのかな。
広い背中を見つめていたら、いきなり宍倉さんがクルリと振り向いた。
「終わったぞ」
片膝立ちで座ったまま、挑むような目つきで、俺を見上げて宍倉さんが言った。
「え……」
見下ろしても見上げても近寄りがたい迫力がある。
「支度だよ」
圧されて呆けてる俺に説明を足す。
「あ、支度……」
動揺して慌てて肩が跳ねた。
「問題ないだろ。姫せんせい」
宍倉さんが立ちあがる。いきなり光を遮断して影に覆われる。そびえる山を見上げるような顎の角度。
距離が近い。はっとして数センチ後ろに下がる。
「ええ、全く問題ないです」
間が空くと気まずい。俺は宍倉さんに見惚れてた。
キレイとか、そういうレベルじゃなくて、存在そのものに目を奪われてた。
じっと目を見て話せるタイプじゃない。
宍倉さんの全体の印象は硬質なのに、瞳の色と光は近づくほど柔らかくなる。
心の奥まで見抜かれそうで吸い込まれそう。だから答えた後、慌てて俯いてしまう。




