玲央と亮輔 31
「始めに色々言っても混乱してしまうと思うので、分からないことがあったら何でも聞いてください。長くなってしまいましたけど、朝の支度はこんな感じです」
まだ何か言いたそうに見えて気になったけど、仕事に遅れてしまうのでは、と時間を確認する。
「ありがとうございました。何となく流れがわかりました。ワタルのことよろしくお願いします」
頭を下げると宍倉さんは背を向けた。
本物のモンペもいるし、他のクラスでは保護者同士のトラブルもあった。
でも良かった。宍倉さんは中身はそこまで変な人じゃない。
「行ってらっしゃい」
後ろ姿に声をかけて教室に入ろうとしたら「先生……」と、宍倉さんに呼び止められて振り返る。
真剣な二つの目と俺の目がまた重なった。
「何かありましたか?」
忘れ物だろうか。
「先生……大丈夫なのか?」
全てを見抜いているような目が怖くて優しい。
いきなり何で?
そこまで顔に出てるとは思えないのに。
「ぜんぜん大丈夫ですよ。元気なだけが取り柄ですから」
たぶん顔が引きつってる。
でも、聞かれても良く知らない相手に打ち明けられるような内容じゃない。
「夜の自販機はまぶしいくらいだ。ライトセーバー集めて並べたみたいに」
宍倉さんが一人言のように不思議なことを口にした。
「だから外灯の近くに自販機があるとさ。昼間みたいにはっきり見えるんだ。こっちが暗いとこにいると余計にはっきりとね」
何が言いたいんだろう。
「ワタルは聞き分けのいい子だけど、夜遅くなってもなかなか寝てくれないんだ。今日は初の登園日だからって早く寝かせようとしたのに難しくて。夜の散歩に出て公園のブランコで少し遊ばせてた」




