玲央と亮輔 30
「プリントってこれですよね?」
ダミ声で聞かれる。
「ええ、それ……」
と、言いかけてプリントの上部に釘付けになる。
宍倉航の名前のうしろにクラス名はみつばち組と書かれてた。
うわ。だから二階のみつばち組の部屋に間違えて行ってしまったんだ。
園庭から廊下まで光が射しこんで、ちょうど逆光になって宍倉さんの顔が黒い。
つねに上から見下ろされる形で余計な圧が掛かるっていうのに。
原稿は俺が作ったもので、ミスを突きつけられればなおさら気まずい。
謝らないと。
「すみません。本当にすみません。あざらし組をみつばち組と書き間違えたのは僕です。朝のお忙しいときにお手間を取らせてしまって申し訳ありません」
漆原先生に知られたら、しつこくネチネチ言われるだろう。
「先生、そこじゃないんだ。それよりも……この二つ」
宍倉さんがプリントの真ん中あたりを指さした。
ミスを掘り返して指摘したかったわけではないようだ。
指差した、この二つとは。
お昼寝用の掛けカバーと敷布団用のカバーのことだった。
そうだ。布団のカバーを掛けは保護者にやってもらうから、ちゃんと教えておかないと。
「お昼寝用の掛けカバーと敷布団用のカバーは一週間に一度持ち帰ってもらって洗濯して月曜日に保護者の方に掛けてもらうようにしてます」
「まだ、用意できてなくって……」
急に宍倉さんの態度が弱気になる。ギャップが凄いな。
体が大きいから余計に。項垂れたライオンみたいだ。
「そうですよね。タテヨコ何cmという細かい指定があるから既製品では見つけにくいですもんね。ご用意できるまで園にあるのをお貸しします」
四歳から転園。しかも父子家庭なら、初日から完璧に用意するのは大変に決まってる。




