玲央と亮輔 28
「宍倉さん。すみません。もう少しお時間頂けますか?」
宍倉さんが軽くうなづく。
改めて向き合うと長身に圧倒される。玲央とどっちが高いんだろう。宍倉さんの方が少し高いのかな。
あ、また怜央のこと考えてしまった。今は忘れなきゃ。
「リョーでいいって言ってんのに」
「え? 冗談じゃなくて?」
思わず口から出てしまってから後悔した。
「俺が冗談言うタイプに見えるか?」
眉間が寄ってこめかみに筋が浮いてる。
怖い。リョーさんと呼ぶしかないのか。
「いえ、そんな。これっぽっちも冗談言うタイプには見えません。でも……」
目眩がするほど首を振って違うんだと弁解する。
「先生、リョーでいいって俺が言ってるんだ」
真剣な眼差しに射抜かれる。
昨日の朝と同じく宍倉さんの顔が降りてくる。
拡大すればするほどキレイな顔って珍しい。
初対面のときも感じたけど。
パーツが整ってるから無表情だったり不機嫌だと、より凄みが増すのかも。
でも、細部に視点が合うと優しく見えてくるから不思議だ。
イメージは怖い猛獣。ときどき大きな猫に見えるライオンやトラとか。
「先生、俺は先生にはリョーって呼んで欲しいんだ」
こんなに顔を近づけて囁くように言うことなんだろうか?
疑問に思っても動けない。
この人が言うとそういう意味に聞こえちゃう。
唇の形がエロいから?
ああ、ダメだ。見惚れてる場合じゃない。
「……でも、考えてみたら他の保護者の方は苗字でお呼びしてますし。宍倉さんだけ特別に親しいような呼び方をしたら変に思われるんじゃないかと」
保育士としての意見を冷静に伝えた。




