玲央と亮輔 27
ここ二日。ドキドキしたり脱力したりの揺れが激しくて。疲れてる。
「そうですね。保育園には成人男性の数がすっごく少ないですもんね。お気持ちは分かります」
これ以上こじれないよう、旗色を見て共感を示す。
シンママよりもシンパパの方が数が少ないのは確かだし。
シンママは一クラスに二人くらいはいるけど、シンパパは宍倉さんだけだ。
ママ友ネットワークはあってもパパにはないから孤独だ。
パパ交流会というパパ同士の情報交換の場を設けたこともあったらしいけど、参加者は全年齢合わせてたったの三人だったらしいから。
宍倉さんの言ってることは変じゃないのかもしれない。
でも——
「ワタルくんはワタルくんでいいのよね? この子はマイカよ。仲良くしてね」
マイカちゃんママは一応は納得したようだ。
でもマウンティング体質だからか謎のプライドを保ちたいからか、今度は息子のワタルくんに矛先を変えた。
保育園内で仲間を増やし、つねに勢力を広げようとしてる。園の乗っ取りでも企んでんのか。
架空の序列を作り出して、意味のない努力を周りに強いるからホントに面倒なタイプ。
「パパが知らない人とは口をきくなって。やたらと親切な顔して話しかけてくる相手には気を付けろと言ってました」
しーん。
子どもは素直で悪気ないぶん、大人は反撃できず大きなダメージを食らう。
宍倉さんから受けたダメージをワタルくんで癒そうとしたのに、マイカちゃんママはかえって傷を深くしてしまったようだ。
ぷっくりした拳がぷるぷる震えていた。
「あの、吉本さん。もう八時は過ぎてます。マイカちゃんお預かりしなくて大丈夫ですか?」
気まずい沈黙のなか、当たり前のことを思い出した。マイカちゃんママがハッと時計を見る。
「吉本さん。マイカちゃん今日も体調問題ないですね。じゃあ、いってらっしゃい。ママにバイバイね」
漆原先生がタイミングよく入ってきて、テキパキとマイカちゃんママを追い払ってくれた。
そういうとこはさすがベテラン。
登園ラッシュはいつの間にか収まっていて、ワタルくんは漆原先生に連れられて教室の中に入った。
廊下には宍倉さんと俺だけが残された。




