会いたい 5
常にイベント目白押し。RPGの主人公より子供は成長早いから、普通の日でも戦いだっていうのに。違う。子供たちがモンスターで勇者は俺なんだ。
「ええと、 魔法使いが四人でドロシーが五人で……ライオンが二人、ブリキの木こりが三人と」
オズの魔法使いをアレンジした創作劇の役の衣装はぜんぶ保育士の手作りでドロシーのワンピースはカラーのビニール。
保育士歴五年の先輩、漆原先生と四歳児クラスを担当してるんだけど。
俺の負担の方が大きいのは嫌がらせ?そう思いながらビニールに型紙を当ててハサミを入れる。
「漆原先生は苦手なんだよなあ」
俺を下に見てるし、やたらと仕事に規則をもうけたがるし。反論すれば前例を持ち出すのは上に立ちたいだけのようにも見えるし。
「秋から冬にかけてイベント集中しすぎだろ」
運動会にハロウィン。発表会。年間スケジュールの中で秋にビッグイベント集中しすぎだから変えた方がいいと意見したら睨まれた。
だって忙しい忙しいと言ってイライラするなら、行事を季節で区分けすればいいのに。
芋掘りやハロウィンはずらせないでしょって反論が。だからそこじゃないって。
「イテって……」
縫い針刺さった。本当は発表会の衣装作りにミシンも針も必要ないんだけど。ちょうどいい端切れ生地があったから足したら可愛いかなって。
手芸は小さいときから大好きで、家庭科の成績は良かった。だから衣装づくりは凄く楽しい。
ドロシーのワンピースの形が仕上がった。
明日、持って行こう。
破れないように潰れないように慎重に袋に入れる。子供たちの喜ぶ顔が浮かんだ。
小さなチェストの上には昨日から風船に新聞をぺたぺた貼って作り始めたはりぼて帽子が並んでる。
「もうちょいだなぁ」
まだ乾きが足りない。今は真っ白の半球型だけど、風船割って耳と鼻をつけて色を塗ってーー
「ふう……」
疲れた。スマホの画面見たら、もう十二時過ぎてた。LINEに未読数字あり。まさか玲央から?
心のメトロノームが高速でキュンキュン揺れる。