玲央と亮輔 25
「いや、リョースケでいいっすよ」
「え?」
耳を疑った。驚いて感覚的に前のめりになる。
呼び名に対する宍倉さん(仮)の答えは予想の斜め上をいってた。
いきなり下の名前で呼び捨てしろって?
「そんな。保護者の方を下のお名前で呼ぶのはいくらなんでも……」
目は笑ってないけど、まさかジョーク?
「そうだな、リョースケじゃよそよそしいか。先生ならリョーって呼んでもらってもいいかも」
宍倉さんが首と指をコキコキさせながら、さらにハイレベルな難題を放ってきた。
「え……?」
距離の縮め方が暴力的すぎる。キャラが掴めない。
どんな答えを返すのがベストなのか。誰か選択肢を用意して欲しい。
言ってることはフレンドリーなのに、あいかわらず顔つきとオーラがカタギじゃないし。
「あら、もしかして。今日からあざらし組に入る子のパパさんですかあ?」
頭を抱える俺の耳に、聞きなれた高い声が飛び込んできた。
マイカちゃんママが睫毛をバサバサ上下させて、宍倉さんを見上げてる。
いつの間にか長身の宍倉さんの背後に潜んで様子を窺ってたのか。
割り込み方がわざとらしい。
保育園に今日早めに来たのは宍倉さんのネタをいちはやく拾うため?ハイエナか。
「ええ。そうですけど」
強面で肯定しながら脅すような低音。胡乱な者に向けるような宍倉さんの尖った目つき。
マイカちゃんママの顔が引きつってる。
「リョーさんと呼べだなんて気さくな方なんですね? 私、あざらし組の吉本マイカの母のさとみです。さっちゃんって呼んでください。他のママさんからはそう呼ばれてますからぁ。入ったばかりで分からないことがあったら何でも聞いてくださいね。よろしく! リョーさん。おほほほ」
マイカちゃんママ強い。
ダーッとまくし立てて距離を縮めてきた。




