玲央と亮輔 24
「あの……宍倉ワタルくんのパパですか?」
音にして実感する。
パパという名詞がとても似合わない。
だけどお父さんと呼ぶのは未就学の子供目線主体の園では少し早い。
年の離れたお兄さんというなら違和感ないけど、記入票には父とあった。
「ああ。ワタル、部屋はこっちらしい」
男性に手招きされて横に立ったのは、父親に顔だけは似ている利口そうな男の子だった。
もちろんナチュラルな黒髪で、スタンダードなヘアスタイル。
保護者たちは漆原先生や俺に笑顔を向けたあと、ワタルくんの父親に目が向くとギョッとして、関わらないように避けてる風だった。
「姫先生、他の受け入れは私が対応しますから、どこに何をセットするとか宍倉さんに説明してあげてください」
漆原先生から指示を受けて、あらためて宍倉父子に向き直る。
「ワタルくんだね。おはよう。僕のことは姫先生って呼んでね」
「おはようございます」
四歳の子どもにしてはずいぶんしっかりしてるし、礼儀正しい。
保護者たちの視線がチラチラ飛んできた。
どう頑張っても漂う空気感まで異色なんだから仕方ないのか。
ワタルくんが大人しそうな子どもでよかった。
見るからにヤンチャでトラブル起こしそうな男児なら、新参者という点と父親の容姿のセットで早くから陰口が聞こえてきてしまいそうだから。
猫かぶってないとは言えないけど。
しょせん保護者は保護者。預けるのと迎えの時間がずれてるから保護者同士に距離感あるのが保育園のいいところだ。
「私はあざらし組担当の姫川青葉といいます。し、ししくらさんとお呼びすればいいですか?」
ちょっと噛んでしまった。
そうだ。深く考えずに名字で呼べばいいんだ。




