玲央と亮輔 22
ふと時計を見ると八時まであと十五分というところまで針は進んでた。
いつものように合同保育が行われてる部屋にあざらし組の子供たちを迎えにいく。
あざらし組の教室に入ってから、ロッカーや廊下のフックに新しい園児の名前のシール が貼られてるか点検する。
ししくらわたる、新しい園児の名前にも間違いはない。
そうしてる間にもちらほら早い出勤の保護者たちが登園してきた。
「おはようございまーす」
「あれ? 今日早いですね」
マイカちゃんのママだった。マイカちゃんちの勤務地は駅前だから八時過ぎに子どもを預けても職場には十分間に合う。
「ちょっと早く着きすぎちゃいました」
「すみません。園の決まりで時間がこないと預かれないので待っててもらってもいいですか?」
勤務時間、勤務地から園までの所要時間含めて、子どもを預かる時間を決めてる。
だから保護者の仕事以外の自由時間確保のために、子どもを早めに預かり遅めに迎えにくるのはNGという厳しい規則があった。
「じゃあ待ってまーす。あ、園長先生とお話してこよっかな」
なんか仕事するより園に暇つぶしにきたような雰囲気。
デパートの開店時みたいに一分一秒のずれも許さない融通のなさに、機嫌を損ねる保護者もいるから、まあいっか。
園長せんせいは大らかな人で、その辺のあしらい上手いんだよな。
「姫先生。アキトくん今日はお休みだそうです。まだ熱下がらないみたいですね。病院、今日連れてくって言ってました」
電話を受けたひつじ組の先生が知らせてくれた。
やっぱり今日はアキトくんの登園は無理かと時計を見ると針は八時十分前をさしていた。
登園の保護者はちょうど途絶える時間帯だった。
すこし気が緩んだ心の隙間に玲央が入りこんでくる。
さっきまでは晴れて射し込む陽は明るかったのに、景色が灰色にぼやけてくる。
昨日のことを忘れるくらい楽しいハプニングがあればいいのに。




