玲央と亮輔 21
「ははは……BLって」
少しだけなら当たってる。
「姫先生は日本一エプロンの似合う男性ですよ。そういうコンテストあればいいのに。妄想しちゃうなあ。姫先生の隣には超絶イケメンが立ってて、二人で見つめあいながら料理作ったりして。きゃあ」
なんか話が変な方向に。妄想が爆走し始めてる。止めないと。
「いや、そういうシチュエーション似合うのは花城先生の方……」
「おはようございます。姫先生」
花城先生にベクトルをねじ曲げようとしたら、背後からお馴染みのお経みたいな低音が割り込んできた。
「おはようございます。漆原先生」
いるだけでストレスのはずなのに。
今日はいつもよりインパクトに欠けてる。
昨日の衝撃から立ち直れてないからだ。
漆原先生はスパイシーだけど、所詮はテーブル胡椒でしかないんだ。
ハリッサやマーガオじゃない。
油断すると怜央のことで頭がいっぱいになってしまう。
会う前もいっぱいだったけど。
会ったあとで逆の意味でいっぱいになるとは予想してなかった。
「外にも聞こえてますよ。今日は新しい園児が初めて登園する日だって言ってるのに」
怖い目付きはいつものこと。だけど今回は俺だけじゃなくて花城先生にまで睨みを飛ばしてる。
「すみません」
さっさと謝るか逃げるしか手はない。
「あ……じゃあ私は……」
花城先生は一瞬の隙をついて共犯の罪を追及される前に逃げて行ってしまった。
とたんに空気が張りつめる。
「登園時間は八時過ぎですよね」
仕事の話をしてるのが一番無難。無理して笑顔を作ってみる。
「ええ、そうです。登園したら姫先生が色々教えてあげてくださいね」
「わかりました」
漆原先生の眉間の皺が消えてる時間は少ない。
でも子供たちには慕われてるんだよな。
保護者のウケも悪くないし。
俺と花城先生は気に食わないんだろうけど。
勤務始めたころはそんなにキツい先生じゃなかったはずなのに、いつからだっけーー
きっかけがあったとして、今さら思い出しても意味がない気がした。




