玲央と亮輔 17
「いぃ……いやだああああ」
いきなりスイッチが入った。抑えてたもんが暴発した。
自分でも何が起こったか分からない。
気付いたら玲央を突き飛ばしてた。
全裸の玲央が両脚開いて絨毯の上にひっくり返ってる。カエルか亀みたいに。
すぐに上半身が起きた。茫然と見開かれた互いの目が重なる。
向こうの方がどう見ても力も体格も上なのに。
「くっそ! いい加減にしろよ!」
完全に怒り沸騰してる。全裸のモンスター。
「ごめん……ごめん……」
震える右手がドアノブに触れた。
下げて慌ててドアを開けて、廊下に飛び出す。
玲央の怒号が聞こえた気がしたけど、無我夢中で階段を駆け下りた。たぶん五階以上。
部屋番も思い出せない。
夜の新宿を走る。さっきまでの状況と比べれば、歌舞伎町で騒ぐ人間も光も健全に思えた。
歌舞伎町通りを走って、靖国通りを横断してアルタ前まで戻ってきた。
ほんの数時間しか経ってないのに眺めが違う。
そこで空を仰ぐ。だいぶ濡れてしまったけど。ポタポタ垂れる滴がありがたい。
涙を消してくれる。
改札を抜けるときには動悸は鎮まってた。
その代わりに押し寄せる倦怠感と無力感。
何かにもたれてたいのに、終電間近のJRに俺を座らせてくれる席があるはずがなかった。
電車の中から光が減ってく夜景をぼうっと追いかける。つり革につかまり酔っ払いと支えあう。
身動き不可能の混雑が救いだった。
誰も他人を気にしない。泣きはらして真っ赤な目をした冴えない男のことなんて。
日暮里駅に着いて、そっから家まで歩いて、どうやって寝たか良く覚えてない。
だけど家に着いてから、チャリを駅前に停めっぱなしなのを思い出した。
明日は歩きだから早く家を出ないとって冷静に考えた。
後は、キイキイ鳴る音。公園の側を通ったとき。
たぶん、ブランコが揺れてた。暗かったけど、朝に出会った派手な髪色の人に見えた。
なんでって思っても考える気力もない。もちろん声を掛ける勇気も。
朝まで覚えていられたら、明日考えればいい。




