玲央と亮輔 15
指先がドアノブに触れる。
玲央の鼻歌が止まった。
「あれ? まだ服着てんの?」
不自然な静寂と張り詰めた空気が破られた。
怜央が瞼を開いてこっちを見てる。
いきなり刺されたような痛みが背筋を走る。爪先から指先まで石化の魔法を掛けられたみたいに停止した。
「う……」
喉の窪みで声が詰まる。全身冷えて固まってるのに、わきの下と背中だけ汗が滲んだ。
両腕で自分を抱きしめても震えが止まらない。
「おい! 青葉! どういうことだよ!」
水が激しく溢れる音。罵声のような怒声に身が縮む。
黙って逃げようとしたから。それを責めてるんだ。怖い。
「ごめん……ごめん……」
どうしよう。怒らせた。玲央の顔が見れない。壁紙に背を貼り付けて項垂れる。
「なに? 怖くなっちゃったとかじゃないよな?」
キンキンに冷えたトーン。玲央の声が近付いてくる。
お湯の匂いが香る。湿って熱い空気に囲まれる。湯気のような息遣い。
視線をどうにか上げると玲央が俺の後ろの壁に手をついて見下ろしてた。
玲央の怒りに連動してるみたいに肌から湯気が立ち上ってる。
「ごめん……ごめん……」
情けない涙声で理性にすがる。
「なあ、俺のこと好きって言ってたじゃん。だったらいいだろ」
水気の残る手に頬を撫でられ、耳に息がかかる。声が囁くように甘く変化した。
「ごめん……ほんとに。今日は……」
「ここまで来て? 会ったのは初めてだけど。けっこう色々話したじゃん」
「でも、やっぱりまだ……勇気が出ないんだ。だからごめん……」
ともかく謝るしかない。




