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1+はんぶんこ✕2  作者: 春野わか
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玲央と亮輔 14

「そう言ってもらえてホッとした。経験ないのも弱気な性格も。体格も。女顔も。コンプレックスだらけだから」


 とうとうデニムを脱いで下着だけになった。

 あと一枚を脱ぐのに勇気がいる。

 これを脱いだら、生まれ変われるんだろうか。

 ベッドを囲む大きな鏡に映ってる。華奢な細い体に、小さな顔に目ばかり大きい子犬みたいな顔。


「じらすなあ。そこがいいんだけど。ねえ。青葉が見られたくないなら、俺のこと見ててくれる?」

 

 目を閉じてても玲央には伝わってるんだな。俺のためらいが。


「見てるだけでいいの?」


「ああ……うん。ほら……」


 浴槽の縁に乗せた両脚がさらに大きく開かれた。

 真剣に目をこらす。

 虹色に染まる湯面が波打って。


「……」


 玲央の右手が激しく動いてる。何を見せられているのか最初は気付かなかった。


「ああ……はあ……はあ……お前の写真見て、昨日の夜は三回もヌイたよ」


 玲央の声がかすれて息が荒い。


「え? え?」


 湯が波打つ。良く見ると脚の間のぶくぶくの泡からキノコの頭が覗いてた。

 虹色のスポットライトを浴びて。


「ゴジラ……」


 ハリウッド製の足長ゴジラの登場シーンを思い出した。海面が盛り上がって海を裂いて姿を現す。

 形はキノコだ。なのに、どうしても脳内ではゴジラヘッドに変換されてしまう。

 ジャグジーの泡が視覚効果を増幅させてるのかもしれない。

 イメージでとらえるとそうなるんだ。そうじゃないって分かってても。そういう風にしか見えない。


 ツバを飲んだ。息も殺して。

 そっと腕を伸ばしデニムを拾って、できるだけ音がしないように脚を通した。

 クローゼットを慎重に開いて、セーターを引っ張りだして素早く身に着ける。

 ジャケットも着て、リュックを背負う。

 玲央は目をを閉じたまま気付かない。右手が上下して、ゴジラヘッドがゆらゆら揺れてる。

 ゴジラの首を締めて倒そうと格闘してるようにも見えた。

 

 鼓動が加速して、血が上って下顎から耳下がじんじんしてきた。

 爪先で絨毯を踏む。静かに、静かに。抜き足、差し足。





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