玲央と亮輔 11
「そっか。でも雨が強くなってきた。濡れるよ。もっとこっちに寄れよ」
ヘッドライトに照らされて、強く引き寄せられた。タイヤで水が跳ねるほど降っているわけじゃないのに。足元がふらつく。
玲央の眉間から皺が消えてた。
今差してるのは玲央の傘で、俺の折り畳みの傘はリュックにしまわれたままだ。
この傘の下から逃げ出そうと思えば逃げ出せる。
「着いたよ」
玲央の足が白い壁のホテルの前で止まった。チャペルか結婚式場みたいな外観。ヨーロッパの建物みたいな。
「ここ、人気あるみたい。俺はもっと先にあるバリ風の方がそそられるんだけど」
ダメだ。逃げ出せない。
ホテル内の眺めは、俺が置かれてる日常からするとまるで宮殿か城だった。
シャンデリアの輝きに絨毯も。
玲央が取った部屋までエレベーターで上がる。
すでにここは普通のホテルじゃない。
中に入ってしまったらオッケーしたも同じになってしまう。
「おお! すげ! いいじゃん」
玲央がはしゃいでスイッチを入れると明かりがついた。
日常より暗めの照明。
むき出しのセックスがブランデー色の影で抑えられて落ち着きと一定の節度が保たれてる。
それでも全体のスペースに占めるベッドの巨大さにいやでも緊張が高まってきた。
「荷物置きなよ。風呂入れてくるね」
入れてくると言っても浴室はガラスの衝立で囲まれてるだけで。
閉じてなくて丸見えで、浴槽もベッドに負けないくらいの非日常的なオーラを放出してる。
「濡れてるだろうから脱いだ方がいいよ」
玲央はもう上半身裸でボトムのベルトを外そうとしてるところだった。
同性だしラブホにいるといっても、あまり直視するのも失礼な気がして何となく視線を他へ向ける。
金具の音がして玲央がベルトを床に落としたのが分かった。




