玲央と亮輔 10
「今日はそのつもりって考えていいんだよな?」
腰に回された手が下におりて際どい箇所を撫でる。
迫ってくる。妖しい色彩が混じりあうネオンの海に。
今の俺には断れない。ネオン色に染まったクラゲが揺れてる。ぷるぷる、ぷるぷる。
遅刻したのに払ってもらって。
昨晩から不安と期待でさんざん揺れて。
玲央ならばって覚悟してのぞんだのに。
いざストレートに真っ正面から迫られると言葉が出ない。
「あ……ドロシーの衣装」
超現実がとつぜん頭の真ん中に降りてきた。
「ああ、あの紙袋。そういえば」
「ごめん。取りに行ってくる」
店からまだそんなに離れていない。傘もささずに慌てて店に戻る。玲央が座ってた側の脇に置きっぱなしになっていた。
ずっと玲央に持ってもらっていたから。
大事なものを人に預ける甘さを痛感する。
夜の雨の色が罪悪感でどんより濁っていた。
「ごめん……」
息を切らしたまま謝る。傘を差して待っていた玲央の表情が冷めてみえた。
不機嫌になるのも無理はない。
「それ、ちょっと邪魔だな」
冷たい雨のせいだけじゃない。やっぱり少し怒ってる。
デートには邪魔なのは確かだけど、苦労して作った衣装だから邪魔と言われてショックを受けた。
「ごめん……」
責められても、今更どっかに預けるなんてできない。
罪悪感が重なって周囲の色が淀んでいく。
「仕方ねえなあ。さっきの続き! 俺のことも怖い? ねえ! 中学の時の教師みたいに」
乱暴であきれた口調。
苛立ちさえも正論だけど。
「玲央は違う。優しい。怖くはないよ。でも緊張する」
ほんの少しウソをついただけなのに。
透明のクラゲがウソ発見器みたいに細い糸の先で激しく揺れた。




