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1+はんぶんこ✕2  作者: 春野わか
34/199

玲央と亮輔 10

「今日はそのつもりって考えていいんだよな?」

 

 腰に回された手が下におりて際どい箇所を撫でる。

 迫ってくる。妖しい色彩が混じりあうネオンの海に。

 今の俺には断れない。ネオン色に染まったクラゲが揺れてる。ぷるぷる、ぷるぷる。

 遅刻したのに払ってもらって。

 昨晩から不安と期待でさんざん揺れて。

 玲央ならばって覚悟してのぞんだのに。

 いざストレートに真っ正面から迫られると言葉が出ない。


「あ……ドロシーの衣装」


 超現実がとつぜん頭の真ん中に降りてきた。


「ああ、あの紙袋。そういえば」


「ごめん。取りに行ってくる」


 店からまだそんなに離れていない。傘もささずに慌てて店に戻る。玲央が座ってた側の脇に置きっぱなしになっていた。

 ずっと玲央に持ってもらっていたから。

 大事なものを人に預ける甘さを痛感する。

 夜の雨の色が罪悪感でどんより濁っていた。

 

「ごめん……」


 息を切らしたまま謝る。傘を差して待っていた玲央の表情が冷めてみえた。    

 不機嫌になるのも無理はない。


「それ、ちょっと邪魔だな」


 冷たい雨のせいだけじゃない。やっぱり少し怒ってる。

 デートには邪魔なのは確かだけど、苦労して作った衣装だから邪魔と言われてショックを受けた。


「ごめん……」

 

 責められても、今更どっかに預けるなんてできない。

 罪悪感が重なって周囲の色が淀んでいく。


「仕方ねえなあ。さっきの続き! 俺のことも怖い?  ねえ! 中学の時の教師みたいに」


 乱暴であきれた口調。

 苛立ちさえも正論だけど。


「玲央は違う。優しい。怖くはないよ。でも緊張する」


 ほんの少しウソをついただけなのに。

 透明のクラゲがウソ発見器みたいに細い糸の先で激しく揺れた。


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