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1+はんぶんこ✕2  作者: 春野わか
32/199

玲央と亮輔 8

「ううん。当然だよ。玲央はカッコいいから。チャットで話してて、派手めの仕事してる人なのかなって思ったし。だから、俺なんかのどこがいいの?」


 進行形で他にもいるんでしょ?とは聞けない。

 まだ、そういう関係ではないから。


「うん、スタイリストやってるから出会いは結構あるよ。業界のやつらはソッチもバイも多いから。俺も狙われたよ。タチだからゴメンだけど。アイドルのT・MとかA・Eとかと付き合ってたこともあるしね」


 やっぱり。だからセンスいいのか。同じ黒のVネックでも着こなし全然違うもんな。

 ますます凹んでしまう。


「周りにいるの遊んでるやつばっかだし、男女関係なくテレビでは清純ぶってて。裏側を見ちゃうとね」


 酒は弱い。実はほとんど飲めない。そういうとこも無理してる。だって待たせた上に俺のためにオリジナルカクテルまでオーダーしてくれた。


「だから俺みたいなのが……って、こと?」


 酔ってる。ずっと俺の体に玲央の手が触れてる。髪を撫でたり耳に唇を寄せたり。玲央の手と指と息が、酔いを加速させる。


「そうだよ」


 太股に置かれた手が内股に滑り込んだ。慌てて体を離そうとする。

 俺が口ごもったり嫌がったり、俯いたりすると玲央の瞳の光度がヤバくなる。

 離れようとすると強引に引き寄せられる。

 

「可愛いな」


 じっと視線を注がれる。水槽の中の熱帯魚というワードが浮かぶ。

 狭い水槽でひらひら泳ぐ俺をじっと見つめる玲央。獲物を狙うサメのように。


「その紙袋に入ってるのは、学芸会で使う子どもたちの衣装で。作るのちょっとしんどかった」


 視線と沈黙が気まずくて何か話さなきゃって思ったら、こんな話になってしまった。


「凄いな……そんなに頑張れるなんて。俺、子ども大嫌いだから尊敬するよ」


 温まってきた体の中心が冷えた。


 子どもが嫌いだって?


 俺は保育士で一日中子どもたちと過ごしてる。週に五日、下手すれば六日。

 これからも子どもの話題避けて付き合うなんてできるんだろうか。


「そっか。子ども嫌いなんだ……」


「俺、ちょっとトイレ行ってくる。逃げないでね」


 顔が引きつる。

 玲央の背中が奥に消えてホッとした。



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