玲央と亮輔 8
「ううん。当然だよ。玲央はカッコいいから。チャットで話してて、派手めの仕事してる人なのかなって思ったし。だから、俺なんかのどこがいいの?」
進行形で他にもいるんでしょ?とは聞けない。
まだ、そういう関係ではないから。
「うん、スタイリストやってるから出会いは結構あるよ。業界のやつらはソッチもバイも多いから。俺も狙われたよ。タチだからゴメンだけど。アイドルのT・MとかA・Eとかと付き合ってたこともあるしね」
やっぱり。だからセンスいいのか。同じ黒のVネックでも着こなし全然違うもんな。
ますます凹んでしまう。
「周りにいるの遊んでるやつばっかだし、男女関係なくテレビでは清純ぶってて。裏側を見ちゃうとね」
酒は弱い。実はほとんど飲めない。そういうとこも無理してる。だって待たせた上に俺のためにオリジナルカクテルまでオーダーしてくれた。
「だから俺みたいなのが……って、こと?」
酔ってる。ずっと俺の体に玲央の手が触れてる。髪を撫でたり耳に唇を寄せたり。玲央の手と指と息が、酔いを加速させる。
「そうだよ」
太股に置かれた手が内股に滑り込んだ。慌てて体を離そうとする。
俺が口ごもったり嫌がったり、俯いたりすると玲央の瞳の光度がヤバくなる。
離れようとすると強引に引き寄せられる。
「可愛いな」
じっと視線を注がれる。水槽の中の熱帯魚というワードが浮かぶ。
狭い水槽でひらひら泳ぐ俺をじっと見つめる玲央。獲物を狙うサメのように。
「その紙袋に入ってるのは、学芸会で使う子どもたちの衣装で。作るのちょっとしんどかった」
視線と沈黙が気まずくて何か話さなきゃって思ったら、こんな話になってしまった。
「凄いな……そんなに頑張れるなんて。俺、子ども大嫌いだから尊敬するよ」
温まってきた体の中心が冷えた。
子どもが嫌いだって?
俺は保育士で一日中子どもたちと過ごしてる。週に五日、下手すれば六日。
これからも子どもの話題避けて付き合うなんてできるんだろうか。
「そっか。子ども嫌いなんだ……」
「俺、ちょっとトイレ行ってくる。逃げないでね」
顔が引きつる。
玲央の背中が奥に消えてホッとした。




