玲央と亮輔 2
「ごめん。遅れて……」
玲央が目を細めたまま首を傾げると長めの茶髪が肩に触れた。サラリと音がしそうなくらい艶やかな。シルバーのイヤーカフがキラリと光る。
高そうな膝下までの紫がかったロングコート。
圧倒されて疚しくて。俯いて逃れた視線が泳いで多数の視線に捕まった。
でも、玲央が目を向けたとたんに周囲の目の方が小魚みたいに逃げだしてしまう。
特別感のある華やかなオーラ。くらべると俺はまるで子どもだ。四歳の年の差どころか十歳も年下みたいだ。身長も見た目も振る舞いも。
「会いたかった。会えた。それだけ!歩こうよ」
高い鼻の下の形のいい唇から信じられないほど甘い言葉がこぼれた。
左手を取られてコートのポケットの中で指がからまる。
「それ荷物? 酒は飲めるでしょ?」
言われてハッとなるダサい恰好。背中にはリュック。右手に発表会の衣装入りの紙袋。ユニクロのセーター。安物のボアジャケット。
髪につけたジェルの効果はとっくに薄れてる。
玲央が俺の荷物をなぜか持ってくれた。自分で持つと言おうとしたら「可愛いな。会いたかったよ」と頬に軽くキスされた。
酒と香水が同時に香る。
一時間も待たせてしまった。拒めない。
女子のように扱われても全然イヤじゃない。
「さっきまで、たまに行く店で飲んで時間つぶしてた。そこでもいい?」
伊勢丹の方に向かってる。やっぱり二丁目にお店はあるのかな。
気のきいた話題が浮かばない。ポケットの中では完全に恋人つなぎなんだけど。
風は冷たいのに顔が熱い。
来月はもうクリスマス。早いな。一年過ぎるのが。
道の向こう側のビックロもクリスマステイストで、丸井のショーウィンドウにはスワロフスキーのトナカイが並んでいた。煌びやかなファンタジー世界がガラスの内側に詰め込まれてる。




