玲央と亮輔
駅前の駐輪場に止めて階段を駆け上る。時刻は二十時過ぎ。新宿に着くのは早くて二十時半ころ。一時間の遅刻だ。本当に玲央には申し訳ない。
数分待ってホームに列車が滑り込んできた。水曜日だから山の手線車内でも、人と人との間に隙間はあった。
それでもドロシーの衣装が潰れないように抱えてドアの側に立つ。
ガラスに映る気弱な顔を透して、暗い夜に白い光の帯が流れていく。
これから会える。ドキドキするのになぜか切ない。
あと一駅。新大久保を過ぎたところでラインで送る。了解のスタンプが返ってきた。
遅延はなく無事に新宿に着いた。今日の一日の流れを振り返ると当たり前のことがドラマに思てくる。電車を降りて混雑する地下を進み駅ビルのルミネエストのエスカレーターで地上に出た。
東口の交番から赤、黄、紫、緑のALTAの文字が見える。後、少し。東口の駅前広場で信号が変わるのを待つ。左側にあるビルの3D巨大猫が眠そうにあくびをしていた。
信号が変わった。焦るから自分の動きが緩慢に思えた。
ああ、どこにいるんだろう。探さないと。電話した方が早い。スマホをポケットから出してコールする。なかなか出ない。
「青葉……」
冷たい風が抜けて、右耳に甘くて温かい息が注がれた。左耳の方では呼び出し音が鳴ったまま。
息が止まりそうになる。この登場はズルい。後ろからいきなり抱きしめるなんて。
「玲央……」
その名前が背後のリアルにすぐに繋がらない。長い腕にガッシリとくるまれて、右耳の下に玲央の息遣いを感じてどうにかなりそうだった。
近いのに、近すぎて顔が見れない。凄くいい匂いの香水に溺れて膝が折れそうになる。
「びっくりした?」
想像してた通りのセクシーな声だ。
「う、うん」
「遅れた罰だよ」
両肩を掴んでクルリと対面させられる。玲央は長身だった。見上げる形で視線が合う。モデルみたいだ。こんなイケメンが俺を待っててくれてたなんて。




