出会い 18
結局、十九時半近くになってようやくアキトくんのママが到着した。
それまでの間、焦燥の波が何度も起こるたび、あきらめを積み重ねて抑え込んでこらえた。
やっと解放されたけど約束の時間を過ぎてしまってる。
スマホは保育園を出てから確認しよう。
初顔合わせから遅刻なんて。しかも遅れると連絡もせずに。がっくり肩が落ちた。もともとなで肩だけど。
「今日はお疲れ様でした。明日は新しい園児が入ってきますから。また大変ですけどよろしくお願いしますね」
給料なしの残業なのに爽快でやり遂げた感のある声は何でなんだ。
俺とは真逆な漆原先生のピンと伸びた背筋を駐輪場で見送る。
姿が消えて、がくっとヘタりそうになった。
スマホを取り出す。長方形の明かりが暗闇に染みだした。あったかい画面をタップしたとたんに感情が巡ってLINEの未読数字に涙が落ちた。
怖いけど開かないと。
メッセージが一件だけ届いてた。
【電車遅れてる?】
瞳がうるんで文字がぼやける。
あわててメッセージを送る。
【本当にごめん。クラスの子が熱出しちゃって。今からだと、そっちに着くの一時間後になっちゃうかも。もう、無理だよね? 時間過ぎてから連絡するような奴なんて】
入力しながら辛くなってきた。せめて、遅れると分かった時点で連絡できていれば。
【なんで? 待ってるから早くこいよ】
ぐちゃぐちゃしてる間に既読がついて、玲央のメッセージが表示された。体の中心がきゅんと縮む。
【ごめん。急いでいく】
一言送り、必死にチャリをこいだ。ドロシーの衣装を乗せて。暗い夜の風を切る。家路につく人々の流れに逆走する。駅を目指して。




