出会い 17
「あざらし組さん大変そうだから、ちょっとお手伝いしてたら帰るの遅くなってしまって。かえってご迷惑になってしまいました?」
アイドルのカンナちゃん似で、眉毛ハの字上目遣い。ノンケならめまいを起こしそうなぴえんな表情で迫られる。悪いのは花城先生じゃない。
俺が悪いんだ。色んな意味で。
「迷惑だなんて。ありがとうございました。保護者には一応連絡つきましたから」
サイテーだ。無私の心で残ってくれた花城先生に「まだいたのか」なんて。
心の声でもサイテーだ。口ではキレイにまとめながら、今だって早く帰って欲しい。そうすれば玲央にメッセージ送れるのにって自分本位なことばっか考えてる。
「姫先生。こんなところで何を? お手洗いじゃなかったんですか?」
予想通り、お経のような棒読み低音が割って入ってきた。やっぱり出た。漆原先生。
「ええ、花城先生とたまたまっていうか。手伝ってくださったみたいなのでお礼を言ってたとこです」
顔が引きつる。苦しくても言い訳はしとかないと。
「私はぜーんぜんいいんですよ。それよりも姫先生。誰かに連絡しなくていいんですか?さっきからスマホをすっごい気にしてますよね?」
花城先生。助け船のつもりかもしれないけど泥船だよ。なんて余計なことを。
「まさか。クラスの子が具合が悪いってときに。無駄話だけでなくトイレでこっそりスマホを見ようと思ってます?」
漆原先生の顔つきが険しくなる。
ああ、サイアクだ。
「じゃ……じゃあ私はこれで。お先に失礼します」
花城先生は空気を読んで、逃げるように出ていってしまった。
シベリアの冬の森林なみの静けさでロッカー室が凍りつく。
「本当にトイレに行きたいんです」
泣きそうな声で訴える。
「ダメなんて言ってませんよ。でもスマホは置いてってくださいね」
仕方なくスマホをリュックに戻した。




