出会い 15
「はい、わかりました」
解決策をあっさり思いついたから良かった。
このまま退勤まで何事もありませんように。
バタバタしてるうちに時計の針は十七時を過ぎていた。
外はもう暗い。
ぽつぽつと保護者が迎えにきてあざらし組の子供たちの数も三分の二くらいに減っていた。
「姫せんせーい。アキトくんがお腹痛いって言ってる」
十七時半になったころ、ユリアちゃんに袖を引かれた。見るとテーブルでブロック遊びをしていたアキトくんがお腹を押さえてうずくまっていた。
「アキトくん。お腹痛いの?」
そばに寄って体に触れる。熱い。おでこに手をのせる。朝の体温も、お昼もちゃんと食べて午後になってからも普通に見えたのに。
「漆原先生。アキトくんが!」
事務室にいる漆原先生を呼びに行く。漆原先生は報告書を書いていた。
「まず熱をはからないと」
アキトくんの脇に体温計を入れて計る。体の熱さに比例して数字がぐんぐん上がっていく。止まった体温は三十九度を超えていた。
抱えていたアキトくんの体が震えた。と、思ったら。
げぇええ、と床に吐いてしまった。
「そこ、ちょっと拭いておいて。園長先生に言って保護者に連絡して」
漆原先生はそう言い置いてアキトくんをトイレに連れていった。そろそろ降園ラッシュという時間帯なのに。ハプニング。
アキトくんちは延長保育組で、いつも十九時ころにお迎えにきて預けるのも早番だから、保護者と顔を合わせる機会がない。
急いで勤務先に電話をかけた。
ツーコールで女性が出た。アキトくんママは打ち合わせで席を外しているらしい。伝えてもらい折り返しを待つ。
十五分経っても連絡がこない。
父親の方にも連絡すべきか。連絡先を見ると祖父母は都外在住。
待っているうちに十八時近くになってお迎えラッシュが始まった。もう定時では帰れない。具合の悪いアキトくんを、関わりの少ない非常勤や遅番の先生に預けて帰るなんてできない。
しかも、SNSで知り合った同性に会いに行くためになんて。




