出会い 14
「ああいう保護者にまともに対応してたら一日中終わりませんよ」
マイカちゃんママの変なマウント世間話から解放されてのちに、漆原先生にチクりと刺された。
まったくその通り。マイカちゃんママはいつも周囲に過剰なアピールをしてる。人よりも上に立ちたい。情報をたくさん持っていること、大勢の先生と仲が良いというのが重要みたいで、さっきみたいに俺にさえ情報量のマウントを取ろうとしてくる。
毎朝必要もないのに園長先生と話していくのがそのためなのは見え透いていて。
いったい何と戦ってるんだろう。
まあいいや。教室の掛け時計を見る。ふっと力が抜けた。
十八時までの勤務だから、あと一時間半くらい。このまま何事もなければ玲央と——
「姫先生……姫先生!」
「……え?」
とうとつに漆原先生の声が大きくなった。
「今、話したように。それ! 家に持って帰ってくださいね」
一瞬、意識が怜央の方に持ってかれてしまってたのか。
「それって?」
話聞いてなかった。
「ドロシーの衣装ですよ」
漆原先生の指が壁際に並ぶ園児たちのロッカーの上の紙袋を指していた。
「何でですか? せっかく持ってきたのに」
かさばるドロシーの衣装を怜央とのデートに五着分も持ってけって?
「発表会まで日数があるんですよ。そんなとこに置いといて子供たちが破いたりしたら苦労が水の泡になりますよ」
「でも、ホールの倉庫に入れておいちゃダメなんですか?」
ホールは大きなイベントや入園卒園で使われる。体操用のマットや運動会、発表会で使われる道具も収納できる倉庫があった。
「あそこは大道具でもういっぱいです。だから、今日は持って帰ってください」
そんな。でもここで反論したら変に思われる。
そうだ。家は駅方面にあるんだから寄って置いて新宿に向かえばいいんだ。




