出会い 13
言ってることは正しい。だけど、トイレとスマホと合わせたって数分程度。
腹はムカムカしてるけど、逆らってややこしいことになって玲央との待ち合わせ時間に遅れたら。今日は大事な日なんだ。素直にやり過ごした方がいい。明日にはきっと、漆原先生なんて宇宙に浮かぶ塵みたいに薄くなる。色のはげた雲梯やすべり台も、他の眺めもきっと違った色に見えているはずなんだ。
そういえば、玲央ってつぶやいたの聞かれてなくてよかった。
お昼寝が終わってからの午後の時間経過はとても早い。
早番の先生たちがあがって、十六時くらいになると迎えにくる保護者もいる。
「そういえば、園長先生に聞いたんですけど、あざらし組に新しい子入るんですよね?」
今日の一番早いお迎えは近所のドラッグストアでパート勤務してるマイカちゃんのママだった。いつもは十七時過ぎのお迎えなんだけど。彼女は話好きの代表格で、朝も毎日、園長を掴まえては喋り倒して職場に向かう。
だから情報が早い。
「ええ、僕も明日初めて会いますから名前くらいしか知らないんですけどね……」
厳密に言えば個人情報は貰ってる。接するのは初めてというだけ。
明日になれば分かることなのに何でそんなに詮索するんだろう。
保育士やってると子どもよりも保護者の個性に疲れてしまうことがある。
マイカちゃんママはいつも冒頭に「園長先生に聞いたんですけど」とつけてから話し始める。そこが一番目につく彼女の個性だ。
「ええ? 担任なのに? 考えたんですよ。四歳児から転園で十一月なのに良く入園できたなあ。何かご事情があるご家庭なのかな?って」
そういうことか。瞳をキラキラさせて悪気なさそうなのに魔女のオーラをしょっている。
明日からの入園が決まっているのは父子家庭だ。
保育園だから保育の必要度が高い家庭ほど点数が高く優先される。それに年齢が高いクラスほど空きが少ない。
子供が宍倉航で、父親が亮輔という名前だったはず。




