出会い 11
「おはようございます」
中番の登園ラッシュの時間になった。
蛇ににらまれたカエルになりかけていた俺は救われた。保護者に連れられた園児たちが続々と登園してくる。
保護者も園児も千差万別で。毎朝あいさつくらいで世間話を嫌う保護者もいれば、やたらと話好きな保護者もいる。
「ふう……」
一人の欠席者もなく受け入れ完了して息をついた。
次は朝の体操に外遊びが待ってる。
「姫先生、髪の毛、なんか付けてます?」
園庭に出ようとスニーカーを履いてるときだった。漆原先生が眉をひそめて俺の髪を指差す。
「え? ええ! ちょっとジェルを……オッケーですよね?」
普段はジェルなんて付けないから指摘されて動揺する。特別じゃないのに俺にとっては特別なこと。今日の夜への期待まで見透かされてるようで。
それに漆原先生の場合は良く気がつくのとは違って、細かいだけだから不愉快なんだ。
たまには言い返してやりたい。
「オッケーというか、匂いがちょっとキツいんですよ」
ええ?匂いまでチェック。そこまでキツくないはずないんだけど。あっさり反論を封じられて後退する。
「すみません。無香料のものを選びます」
よっぽど鼻がいいんですね、と心の中でツバを吐く。今日は玲央とデートデート。
「ジェルだかワックスだか……子供相手に色気出してどうするんですか。小さい子は抱っこして欲しがるし、平気で髪に触ってきたりしますよね?」
カチン。二〇代独身男子が少し身だしなみに気をつかったくらいで色気出してるまで言うのか。中学高校の教師か。
「……じゃあ、つけないようにします」
少しふてくされる。もう難癖に近い。別にいいけど。どうせジェルやワックスでセットしても、帰るころには乱れてるんだろうから。早く怜央に会いたいよ。




