出会い 9
「その……すみません。発表会用のドロシーのワンピース作るのに夢中になってしまって。漆原先生からのLINE気づかなくって。今、見ますね」
用意していた言い訳を何とか言えた。
うつむいてるから漆原先生の表情は分からない。
慌てて荷物からスマホを取り出そうとすると「もういいです。私の方で対処しておきましたから」と、ピシャリと弾かれた。
ウソはウソなんだけどさ。だって本当にどう付き合えばいいのか。
何かすれば余計なことを。しなければ何でやってないんですか?反論すれば睨まれ、頷けば真剣に考えてます?
そんなに袋小路に追い詰めたら、チーズくれないとネズミみたいに嚙みつくぞ。
不満をこらえて頭を下げ、二歳から五歳まで合同で保育してるホールに四歳児クラスの子供たちを迎えにいく。
「姫先生おはよう!!」
早番の時間に登園してるユリちゃんとスズちゃんとルイトくんが飛び付いてきた。
パワフルで柔らかい。抱きつかれただけで燃料をチャージされたみたいに力が沸いてくる。
にごりかけてた魂に透明度が戻った。
姫川だからヒメ先生。まだ上手に話せない幼い子が言いやすいように漆原先生はウル先生という呼び名になっている。
クラス十八名のところ、登園しているあざらし組の子はユリちゃんとスズちゃんとルイトくんの三名だけだ。
職員の勤務時間は早番、中番、遅番とあって、早番は開園から夕方四時まで。中番は六時まで。遅番は七時までになってる。
七時に登園する子どもは少ないから、三学年同時に一つの部屋でまとめて見て、中番の職員が来てからクラスに移動する。
中番の朝八時は登園のラッシュタイムで、一日のうちで一番精神的エネルギーを削り取られる。




