出会い 7
「花城先生は田端から電車ですもんね」
「まあ、でも自転車でも歩いてでもサイアク来れる距離ですけどね。実家だから家事は楽させてもらってますし。姫川先生は自炊してるんでしょ? えらい!」
田端は日暮里から二駅だから近いことは近い。けど駅から保育園まで三十分近くかかるから、歩くには遠いだろう。
「そんな……自炊っていっても大したものは作れませんよ。飯炊いて汁物、副菜、主菜と簡単な総菜合わせるくらいで、誰でも作れるようなもんぐらいです」
早番の先生たちに挨拶しながら職員用のロッカー室に入って荷物を置いた。
「でも、私が男だったら姫川先生お嫁さんにしたいです」
実はさっきのは謙遜で裁縫と並んで料理は得意な方だ。
休みの日は手間のかかるレシピにチャレンジしたりもする。
先週作ったチキンのトマト煮込みは旨かった。
自炊は趣味と実益も兼ねてて、生活費を浮かせるためでもあるから高級食材使ったレストランみたいのは無理だけど。
「今日のズッキリの占い見ました? かに座は十二位だけど素敵な出会いがあるでしょうってやってました! 彼氏がいたら、私だってがんばって料理するのにぃ」
エプロンをつけながら花城先生の話がつづく。
年も近くて話しやすいし、彼女が三歳児、俺は四歳児クラス担当だから、朝の体操や室内遊びでも一緒に行動する機会が多い。
ゲイだから別にいいんだけど。つくづく俺は男として意識されてないんだろう。
お婿さんじゃなくてお嫁さんにしたいって悪気なく言うし。星座占いに夢中で、こっちが独身って知ってるのに彼氏候補とみなしてないし。
「姫川先生は何座です?」
「俺は乙女座……あ、おはようございます」
タイミング良くか悪くか、漆原先生が入ってきた。
子供たちの前では笑顔なのに俺に対しては顔をしかめてばかり。




