出会い 6
胸のドキドキがまだおさまらない。
ペダルを強く踏んで回してスピードを速めた。余裕をもって出てきてるけどタイムロスしてるから。
向かい風がマフラーの防波堤を突破して顔に襲いかかる。紙袋が傾く。右手で抑えて片手運転で進む。
さっきまで熱かった頬が急速に冷やされてカチカチになった。耳下の骨が痛い。
先を右に折れると自宅兼歯医者がある。さらに右に折れてお寺経営の幼稚園を過ぎると動物や虹が描かれたカラフルな壁が見えてくる。
二十年前に卒園した生徒たちが記念に描いたものらしい。その生徒達は俺と同年代なんだなってたまに思う。
保育園に着いたとき、スマホ画面では七時三十六分と表示されていた。
保護者用の駐輪場は外側に、職員用のは中。給食の匂いが駐輪場まで漂ってくる。
今日の献立なんだっけ?
「おはようございます」
自転車のスタンドを立てていると後ろで声がした。
三歳児ひつじ組担当の花城ゆい先生だ。
やけに息を弾ませてる。
〇歳児から五歳児までのクラス名は下から、みつばち、らっこ、こぐま、ひつじ、あざらし、くじら。
「花城先生、おはようございます!」
花城先生は二十四歳独身で、色白で小柄。
髪を二つにわけて耳の下で結んで長さの半分を前に垂らしてる。
ちょっと天然で明るくて、ひまわりみたいな雰囲気。アイドルのカンナちゃんに少し似てる。
挨拶を返したとたんに献立を思い出した。
今日のメインはミートボールだ。
「今日、線路内に人が入ったとかで遅れてて、でもギリギリ間に合って良かったー」
だから汗かいて息きれてるのか。
ゲイじゃなければ、こんな可愛い女性と職場で出会えた幸運に感謝してきっと結婚を夢見るんだろうな。




