LEO 5
「いや、いっぺんに持ってくるのは大変だなって」
こめかみを汗が伝う。
「じゃあ、順番に持ってくればいいじゃないですか」
漆原先生の表情に変化はない。
「全部はまだ完成してないんですよ」
これ以上の反論は危険だ。
「なら、ドロシーのだけでも構いませんよ」
うわあ。負けた。墓穴を掘った。いや、穴は始めから開いてたっけ。
「ドロシーのだけ……」
「まだ月曜日ですから来週までに出来るだけ持ってきてもらえれば。何なら私が運ぶの手伝いましょうか?」
いやだ。それだけは勘弁して。
「いえ、そこまでして頂かなくても。数回に分けて持ってきますよ」
「分かりました。じゃあお願いします」と、そこで会話は終わった。
暫くしてからホールに子供たちを移動させて、ひつじ組とあざらし組合同の発表会予行練習が始まった。
まず、ひつじ組から。花城先生がピアノを弾く。
子どもたちの中にはセリフをまだ覚えきれてない子もいたけど、流れとしては問題なく進んだ。
「姫先生がライオンの帽子作ってくれてるの?」
見せ合いっこを終えて教室に戻る途中、気付いたらワタルくんが左斜め下にいた。
「うん。そうだよ」
「この前、僕の頭の大きさ測ってたでしょ? もう出来た?」
「あともうちょっと」
「姫せんせいの作ったドロシーのワンピース早く着たあい。凄い可愛かったもん」
「発表会楽しみ~~」
と、ドロシー役の女の子たちが話に入ってきた。
純度百パーセントのリアクションに笑顔で返す。
だけど俺の心は罪悪感と不安でキリキリ痛んで面と中身がバラバラな状態だった。




