絆創膏 39
保育園指定の布団カバーを作ろうとしてできた傷じゃないのかも。
考えてみたら、手縫いとしてもたかが布団カバー縫うのにほぼ全部の指に絆創膏巻くほど不器用なんてワイルド過ぎるもんな。
「いや、作業中じゃなくって──」
語尾が途切れたまま、向きを変えると宍倉さんは部屋に入ってしまった。
悪いこと言った?
追って俺も中に入る。
「姫せんせい。これできた!」
床を踏んだとたんにワタルくんが完成品を突き出す。
ずっとレゴに熱中してたのか。ワタルくんが完成させたレゴは青い車に見えた。
「かっこいいね。俺もヘラクレスの部屋に土入れてあげたよ」
「わあ!ホントだ。ありがとう。この車はサンダークラッシュなんだ」
土を入れたケースを見せるとはしゃぐ。サンダークラッシュというのは日曜の朝の戦隊ヒーローが乗ってる車の名前だ。
宍倉さんが廊下寄りの収納の折れ戸を閉めてこっちに戻ってきた。
「先生、これだ……もう、どうしていいか……」
宍倉さんが弱気な瞳で訴えながら床に広げて見せたのは、ボロ雑巾のような何かだった。
「これは……見覚えのある柄」
そうだ。日暮里の生地屋トマトで買ってた。ワタルくんの布団カバー用の。
爆走するレーシングカーの轍のようなワイルドな縫い目だった。
何度も失敗して糸をほどいた跡がある。慣れてないと糸をほどくのも大変なんだよな。だから生地がボロボロに──
これぞサンダークラッシュ。
布団カバーって大きいから。
つい長めに糸を取ってしまって針を抜こうとしたら、生地に糸が引っ掛かって絡まって。
大きな身体でくまさん柄の生地と格闘。
ダメだ。
必死に縫ってる宍倉さんの姿が浮かんで、俺は生地を抱きしめたくなった。




