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渡辺卓也④

その時は突然訪れた。


通勤電車で美咲のSNSをチェックしていると、ちょうど新規の投稿が表示された。


「朝から大事な会議なのに電車が信号トラブルで遅延。間に合うといいけど……」


僕は思わず周りを見回してしまった。


乗っている電車がまさに信号トラブルで停車していたからだ。


しかし、すぐに落ち着いて考える。


信号トラブルが起きた場合、なにも遅延するのはこの電車だけではない。同じ線を走っている全ての電車に影響しているはずだ。だから近くにいるとは限らない。


冷静さを取り戻したつもりでいたが、終着駅に着く頃には、心拍数はかなり上昇していた。


電車を降りるとすぐに前後に目を向ける。


可能性は低いと分かっていながら、必ず会えると信じて疑わない自分がいる。


僕は、大学の頃にSNSで見つけた美咲の写真を、脳にくっきりと刻み込んでいる。


あれから数年が経ったとはいえ、外見は大きく変わっていないはずだ。


ふと、前方にある改札の方へ目を向けた。


その時、雷に打たれたかのような衝撃を受けた。


そこには、想像していた通りの後ろ姿があったのだ。


中学生の頃から彼女を思い続けていた僕の第六感が教えてくれる。


まぎれもなく、あれは美咲だ。


スマートフォンを取り出すと、念のため彼女の後ろ姿を撮影する。


そして、その手で会社へ電話を入れた。


「すみません、電車で体調を崩しまして……これから病院へ行くので今日は休ませてください」


繁忙期ではなかったため、上司はあっさり了承してくれた。


とりあえずは適度な距離を保ちながら、彼女の後をつけることにした。



彼女の職場は大手町にあった。かなり大きなビルだ。


エレベーターに乗り込むのを見届けたところで、追跡は断念した。


会社名までは分からなかったが、それなりのところに勤めているのだろう。


ビルの入口が見えるところにカフェを見つけると、Lサイズのアイスコーヒーを注文して、窓側の席に腰かける。


それにしても、彼女は相変わらず美しかった。僕が長年想っていただけのことはある。


ひとまず今日は、彼女の家を突き止めることができれば満足だ。


僕は体にアイスコーヒーを流し込むと、腕を組んでじっとビルの入口を眺め続けた。




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