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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
本編-新年度編-
56/202

第23話『猫カフェ』

「カフェオレ美味しかったぁ」


 タピオカカフェオレを全部飲んだサクラは、満足げにそう言った。


「紅茶も美味しかったよ」

「良かった。羽柴君がバイトしているお店だし、これからもたまに来ようね」

「そうだな」


 今後は、お互いに予定が入っていない放課後や休日には、サクラと一緒にパールヨタカに行くことが多くなりそうだ。これからの季節的にも、よりタピオカドリンクが美味しく感じられるようになるだろう。


「次はどうしようか?」

「ここに行きたい! って考えていたのはパールヨタカだけだからなぁ。サクラはいくつかあるみたいだし、今日はサクラの行ってみたいお店に行くのはどうだろう? どんなお店なのか興味あるし」

「分かった! ただ、どこかお店に行きたくなったら遠慮なく言ってね」

「了解」

「じゃあ、次のお店に行こうか」


 空になったコップを広場の中にあるゴミ箱へ捨てに行く。その途中、空になったパールヨタカのコップを見つけたのでそれも一緒に。ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てないとね。

 俺達は再び手を繋いで、広場を後にする。サクラの行きたいお店は四鷹駅の北口近くにあるので、駅方面に向かって歩き始める。


「サクラ。次はどんなお店に行くんだ?」

「ひ・み・つ。2、3分で到着するから、それまでのお楽しみ」

「ははっ、そっか。それも面白そうでいいな」


 あと少しで分かるのなら、お店に到着するまで楽しみにしておこう。サクラの行きたいところなら変なところではないだろうし。

 駅周辺はさっき以上に人が多く、賑わいを見せている。友人同士なのか楽しそうに歩く人達。恋人同士なのか抱きしめ会う人達。急いでいるのか全速力で走るスーツ姿の人。よろしくお願いしまーす、とチラシを配っている人。坩堝ってこういう場所のことを言うのかな。

 あと、パールヨタカの行列は俺達が並んだときよりもさらに長くなっていた。頑張れよ、羽柴。


「ここの1階だよ」


 サクラの宣言通り2、3分後に俺達は立ち止まる。目の前にあるのは、灰色を基調とした落ち着いた外観が特徴的な商業ビル。その1階には、


「あぁ、この猫カフェか」


 お店の入口には白い看板に、黒く『猫カフェ・にゃんだかな』と柔らかな形の店名と、猫の顔のシルエットが描かれている。お店には入ったことはないけど、猫好きだし『にゃんだかな』という珍妙な店名なので、この外観は覚えていた。


「ここに来たことがあるの?」

「ううん、一度もない。ただ、ここら辺は何度も歩いたことがあるから、ここに猫カフェがあるのは知ってた」

「そうだったんだ。確か、2年前の今ぐらいの時期にオープンして。友達や和奏ちゃんと一緒に何度も来ているの」

「そうなのか。……そういえば、中3の夏休みだったかな。和奏姉さんがサクラと2人で猫カフェに行ったって言っていたな。それがここだったのかもしれない。受験勉強や部活の疲れが取れたって」

「その時期に、和奏ちゃんと癒しを求めにここに来たよ。和奏ちゃん、近寄ってきた猫を抱きしめて幸せそうだった」


 和奏姉さんも猫が大好きだからな。猫を抱きしめて幸せそうにしている姉さんの姿が容易に想像できる。


「ダイちゃんとは何年も猫カフェには行ってないからね。2人きりだと一度もないし」

「そうだな」


 小学生のときに何度か、和奏姉さんや母さん、美紀さんと一緒に行ったことがある。中学以降は行っていないので、数年ぶりの猫カフェだ。


「さっ、中に入ろうか」


 サクラに手を引かれる形で、俺は猫カフェ・にゃんだかなの中に入る。よーし、今日は猫を堪能するぞ。

 お店の中は結構静かで、「かわいい~」などという人間の声と、可愛らしい猫の鳴き声が聞こえてくる。

 入口近くにある受付で、俺達は60分コースの料金を支払う。サクラは店員さんに落ち着いて話していたり、支払いのときにポイントカードを出したりと常連客ぶりを発揮。

 受付を済ませると、サクラと俺は奥へと入っていく。そこにはたくさんの猫がおり、10名ほどのお客さんが猫と戯れている。どのお客さんも幸せそうだ。穏やかな雰囲気に包まれている。


「今日も可愛い猫がたくさんいる……」


 俺の隣にも幸せそうな奴がいる。サクラは目を輝かせてお店の中を見ている。


「あっちの方のソファーが空いているから、とりあえずはあそこに座ろうか」

「そうだな」


 サクラと一緒に壁掛けの長いソファーに腰を下ろす。

 すると、さっそく俺の足元にでっかい黒猫が近寄ってきて、脚に体をすりすりしてくる。お前、可愛い奴だな。頭を優しく撫でると、黒猫は「にゃ~ん」と鳴いた。


「ふふっ、さっそく乗ってきたね」


 サクラの膝の上に茶トラ猫が乗り、その場でゴロゴロする。


「この茶トラ猫、サクラの膝が気に入ったんだな。さっそくゴロゴロしてるよ」

「この猫は前に来たときも、こうして膝の上に乗ってきてくれたんだよ」

「そうだったのか」


 何度も来たことがある人の言葉だな。あと、この茶トラ猫……俺と気が合いそうな気がする。


「今日はさっそく来てくれて嬉しいよぉ。いい子だね~」

「にゃぉん」

「あぁ、可愛い!」


 サクラは茶トラ猫の頭から背中に掛けて撫でていく。それが気持ちいいのか、茶トラ猫はたまに「にゃん」と鳴いている。凄く羨ましいな。


「あぁ、いい毛触り。にゃおにゃお~ん」

「にゃん」


 それから少しの間、サクラは会話しているかのように、茶トラ猫とにゃんにゃん言い合っている。あの……茶トラ猫さん。サクラを気に入っているのは分かっているけど、少しの間だけでいいので、俺と場所を変わっていただけませんか?


「ダイちゃん、茶トラ猫が好みだったっけ? じっと見ているけど」

「す、好きな模様の一つだよ。あと、昔とは違って、今はすぐにサクラに猫が来るんだな」

「あのときとは違って、猫を前にしてもある程度は落ち着いていられるからね。昔は興奮して、和奏ちゃんと一緒に猫に迫ったな。だから、猫が逃げちゃって、ダイちゃんやお母さん、優子さんの後ろに隠れるのがお決まりだったよね」

「そうだったな。そんなサクラと和奏姉さんのおかげで、俺はただ座るだけで猫がたくさん来てくれたよ」

「ふふっ、そうだったね。楽しかったから、またダイちゃんと一緒に来られて嬉しいよ」

「……俺こそ。ありがとな」


 俺の家の庭やこもれび公園で、たまにノラ猫を見かけて、触ることがある。ただ、こういう場所で猫と触れ合うのもいいな。

 そんなことを考えていると、俺の脚に擦り寄っていた黒猫が膝の上に乗って箱座りをする。そんな黒猫の背中をそっと触る。柔らかな毛が気持ちいい。


「ダイちゃんの膝の上にも猫ちゃんが来たね」

「ああ。ただ、こいつデカいからちょっと重いな」

「かなり大きいよね。ここにいる人達の中ではダイちゃんが一番大柄だし、ちょうどいい人間の寝場所だと思ったのかもね」


 サクラのその言葉のおかげか、この黒猫が膝に乗ってくれたことが凄く嬉しくなるし、より可愛く思えてきたぞ。いい子だから、俺がたっぷりと撫でてやろう。


「にゃぉぉ~ん」

「おぉ、気持ちいいかぁ」

「いいコンビだね、ダイちゃん。……ここの猫カフェは写真も撮っていいし、ダイちゃんと黒猫の写真を撮ってあげようか?」

「じゃあ、お願いできるか? 俺はサクラとその茶トラ猫との写真を撮るよ」

「うん、お願い」


 その後、猫が逃げないように気を付けながら、お互いに膝の上に猫が乗っている姿をスマホで撮影し、LIMEで送り合う。


「ありがとね、ダイちゃん」

「こちらこそ」


 自分だけでなく、茶トラ猫と戯れているサクラの写真も撮れたし。笑顔でピースサインしていて可愛い。この写真も消去してしまわないように気を付けよう。

 サクラの撮ってくれた写真を見ると、俺の膝の上に乗っている黒猫が物凄く大きいことを改めて実感する。お前、普段……他の猫のエサまで食っていそうだな。もしそうならやっちゃダメだぞ。


「な~う」


 気付けば、俺の隣にはスコティッシュフォールドが座っており、俺と目が合うと脇腹のあたりに頭をスリスリしてきた。そんなスコティッシュフォールドの頭を撫でる。


「お前も可愛いなぁ」

「スコティッシュフォールドも可愛いね。……あっ、アメリカンショートヘアの猫ちゃんが来た」


 いい子だね~、とサクラはアメリカンショートヘアの頭を撫でる。気持ちいいのか、サクラを見て「にゃんっ」と鳴く。サクラに頭を撫でてもらえて羨ましいな。

 その後もサクラと一緒に猫と触れたり、猫じゃらしで遊んであげたり、写真を撮ったりする。そんな癒やしの時間を過ごし始めてから30分くらい経った頃。


「速水先輩。こんにちは~」


 ロングスカートにVネックシャツ姿の小鳥遊さんが来店してきたのであった。

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