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サクラブストーリー  作者: 桜庭かなめ
本編-新年度編-
33/202

プロローグ『新年度の始まり』

本編-新年度編-




 4月6日、月曜日。

 今日は高校2年生の始業式の日。

 朝から雲一つない青空が広がっている。この空を見ていると清々しい気持ちになれる。そして、高校2年生のいいスタートが切れ、いい1年間になりそうな気がした。


 ――コンコン。

「はい、どうぞ」


 ノックされたのでそう返事すると、部屋の扉がゆっくりと開く。


「ダイちゃん、準備できた?」


 扉が開くと、そこには幼馴染のサクラこと桜井文香(さくらいふみか)の姿があった。サクラは俺達が通っている都立四鷹(よたか)高等学校の制服を着ており、スクールバッグを肩に掛けている。目が合うとサクラは明るい笑顔に。それがとても可愛くて、キュンとなる。

 俺・速水大輝(はやみだいき)は小学生の頃からサクラに恋をしているのだ。


「ああ。準備できたよ、サクラ」

「じゃあ、一緒に学校へ行こうか」

「そうだな」


 サクラと一緒に、四鷹高校に向かって家を出発する。

 行き先が学校だから、昨日の散歩とは違って手は繋いでいない。それでも、俺の隣を歩くサクラは楽しそうに見えた。その姿が懐かしくて。

 一昨日、俺はサクラと3年ぶりに仲直りできた。3年前に俺が酷いことを言ってしまったのをきっかけに、冷たい態度を取り続けていたことについてサクラに謝られて。俺もサクラを傷つけたことを改めて謝り、仲直りに至ったのだ。そのことで、呼び方もかつてのように「サクラ」「ダイちゃん」と愛称に戻った。

 この3年間、特に高校生になってからはサクラと一緒に登校することは何度もあった。ただ、今のように明るい笑顔でいることは全然なくて。だから、今のサクラを見ると懐かしく思えるのだ。それと同時に嬉しい気持ちにもなる。


「もう完全に葉桜だね、ダイちゃん」


 近所にある四鷹こもれび公園の横を通りかかったとき、サクラはそんなことを言う。

 立ち止まって桜の木を見上げると、サクラの言うように桜の花びらは完全に散って葉桜になっていた。


「そうだな。花……散っちゃったな」

「昨日お散歩したときはちょっと残っていたのにね。寂しいな。ただ、見られる期間に限りがあるから、桜の花を見ると綺麗だって感動できたり、思い出ができたりするんだと思う。今年は両親と離れて、ダイちゃんの家で住み始めたり、ダイちゃんと仲直りしたり。一生忘れない桜の季節になったよ。今年のお花見はいつも以上に楽しかったし」


 サクラは俺に可愛い笑顔を見せてくれる。その笑顔を見て、サクラは本心を言ってくれていると分かる。


「そう言える日々をサクラが過ごせて嬉しい。俺もサクラが四鷹に残ってくれて、サクラと仲直りできて嬉しいよ」

「……そう言ってくれて嬉しいな。来年の桜が楽しみ。そのときはまた、みんなでお花見をしたり、昨日みたいにダイちゃんと一緒にお散歩したりしたいな」

「……俺もだよ」


 来年も四鷹に咲く桜の花をサクラと一緒に楽しみたい。そのときまでには、サクラとの関係がただの幼馴染ではなく、恋人になりたいものだ。

 俺達は再び学校に向かって歩き始める。


「私達、今日から高校でも先輩になるんだね」

「そうだな。高校でも手芸部の後輩ができるといいな、サクラ」

「うん、楽しみだなぁ」

「俺は部活には入っていないから、学校では後輩との繋がりはあまりないだろうな」


 中学生のときも部活に入っていなかったし。


「四鷹高校の生徒が、これからマスバーガーでバイトするかもよ? その生徒は1年生じゃなくて、2年や3年の可能性もあるけど」

「そうだな」


 俺と同じ2年生ならまだしも、3年生がバイトを始めて、その人に仕事を教えることになったら、何だかやりにくそうだ。ただ、3年生は受験もあるから、そうなる可能性はかなり低いと思うけど。

 ちなみに、俺よりも後にバイトを始めた人は何人かいる。ただ、四鷹高校の生徒は1人もいなかったな。あと、その人達は俺と同い年か年上だし、俺がメインで仕事を教えた人はいない。なので、後輩と言える人はまだ1人もいない。


「バイト次第では、今までと違った時間を過ごすかもしれない」

「ダイちゃんは物事を教えるのが上手だから、後輩ができてもきっと大丈夫だと思うよ」

「……幼馴染がそう言ってくれると心強いな」


 勉強などはサクラや友人にたくさん教えてきたけど、バイトでの業務を教えた経験はあまりない。まだ、新しくバイトを始めた人の指導係に任命されたわけでもないのに、ちょっと緊張してきた。

 そういえば、3年前……中学2年生の始業式の日も、登校しているときにサクラと「先輩になるんだ」といった話をしたな。そして、登校して新しい担任の先生が来るまでの間、友人からサクラのことをからかわれたのがきっかけで、


『あんな身体も性格も子供っぽい奴! サクラは恋愛対象なんかに全然ならない!』


 と言ってしまったのだ。今日はそんな事態にはならないよう気を付けないと。

 サクラと話していたからか、あっという間に四鷹高校に到着する。徒歩数分で通学できるのはいいな。でも、サクラと一緒に登校する時間も楽しみたいので、もうちょっと遠くてもいいかなとも思った。

 先生方や生徒会のメンバーが持っている持ち看板によると、新2年生のクラス分けは屋外の掲示板に張り出されているとのこと。その証拠に、第1教室棟と第2教室棟の間にある掲示板に、多くの生徒が集まっていた。

 サクラと俺はさっそく掲示板の方へと向かう。

 掲示板には、2年1組から2年8組までの名簿が印刷された紙が張り出されている。名簿によると、1組から4組までが文系、5組から8組までが理系クラスのようだ。


「私達は文系クラスだから、1組から4組までのどこかだね」

「そうだな。1組から順番に見てみよう」


 まずは1組。

 うちの高校の名簿は、男女混合の五十音順で作られている。まずは俺の名前が書かれていそうな下の方を見るけど、自分の名前はなかった。

 サクラの名前も……なかった。そのことにほっとする。


「私もダイちゃんも1組にはなかったね」

「そうだな。羽柴と小泉さんの名前もなかったな」

「そうだね。じゃあ、次は2組を見てみよう」


 俺達は2組の名簿を見てみる。

 まずは自分の名前があるかどうかを確認するけど……ないな。羽柴もない。

 サクラの名前も……ないな。ほっとしたし、これで一緒のクラスになれる確率が格段に上がったので嬉しくなる。


「お互いに名前なかったね!」


 嬉しそうに言うサクラ。俺と一緒のクラスになりたいと言っていたし、小泉さんや羽柴の名前もなかったから、こんなにも笑顔でいるのだろう。この笑顔を学校でもたくさん見たいので、どうかサクラと同じクラスであってほしい。


「なかったな。じゃあ、次は3組を見てみるか」

「うんっ」


 続いて3組の名簿を見てみる。

 それまでと同じように、自分の名前があるかどうか確認すると、


「おっ、俺の名前があった。一つ上に羽柴の名前がある」

「うそっ! じゃあ、青葉ちゃんと私の名前も3組の名簿にあったよ」

「マジか!」


 サクラと小泉さんの名前があるかどうか確認すると、3組の名簿欄の中に『小泉青葉』と『桜井文香』の名前が並んで書かれていた。


「おっ、本当だ! 2人の名前がある」

「ダイちゃんと羽柴君の名前もあるね! じゃあ、今年も4人一緒のクラスなんだね!」

「ああ。今年もよろしくな、サクラ」

「うんっ!」


 とても嬉しそうに返事をして、サクラは俺に右手を差し出してきた。なので、俺はサクラと握手を交わす。俺が手を握った瞬間、サクラはぎゅっと握る。俺達と一緒のクラスになれる嬉しさや興奮が伝わってくる。

 サクラがこんなにも嬉しそうにしてくれるなんて。サクラと一緒のクラスになれたことがより嬉しくなる。高校2年生はとてもいい1年間になりそうだ。


「おーい、俺達にも握手してくれよ」

「あたし達も一緒のクラスになったんだからさ」


 背後からそんな声が聞こえたので振り返ってみると、そこには俺の親友の羽柴拓海(はしばたくみ)と、サクラの親友の小泉青葉(こいずみあおば)さんの姿が。


「2人ともおはよう」

「おはよう。校門を通ったところで羽柴君と会ったから、一緒に見ていたの」

「そうしたら、俺達4人が同じクラスだって分かって、握手している速水と桜井の姿を見つけたんだよ」

「そうだったのか。羽柴も小泉さんもよろしくな」

「よろしくね!」


 俺達4人は互いに握手をし合い、サクラは小泉さんと抱きしめ合う。

 名前を見つけたときも嬉しかったけど、こうして顔を見ると同じクラスになったことがより嬉しくなる。きっと、楽しくて思い出深い1年間になりそうだ。

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